TRENDIA CLASSIC

探檢實記 地中の秘密

江見水蔭

1 / 5

――雪ヶ谷の道路――金槌で往來を擲く――嶺千鳥窪發掘歴史――土瓶の續出――露西亞式の發掘――棄權の跡――土瓶の仇討――都々逸の功徳――異臭紛々――内部に把手の有る破片――

嶺の發掘を語る前に、如何しても故飯田東皐君との關係を語らねばならぬ。

三十六年の夏、水谷氏が内の望蜀生と共に採集に出かけて、雪ヶ谷の圓長寺の裏の往還を掘つて居た。道路が遺跡に當るので、それをコツ/\掘りかへして居たのだ。

其所へ來合せた一紳士が、貴君方は何をするんですかと咎めたので、水谷氏は得意の考古學研究を振舞はした。其紳士連りに傾聽して居たが、それでは私も仲間に入れて貰ひたい。兎も角手前の宅へ來て下さいといふので、二人はのこ/\附いて行つた。

其先きは、つい、下の、圓長寺。日蓮宗の大寺である。紳士が帽子を取去ると、それは住職の飯田東皐氏。

此所で水谷氏と飯田氏とはすツかり懇意に成つて了つたので、今度は僕の弟子を連れて來ますから、一處に發掘しませうと、大採集袋を擴げた結果、七月十八日に水谷氏は余と高橋佛骨氏と、望蜀生とを率ゐて行く事となつた。

余と望生とは徒歩である。幻花佛骨二子は自轉車である。自轉車の二子よりも、徒歩の余等の方が先きへ雪ヶ谷へ着いたなどは滑稽である。如何に二子がよたくり廻つたかを想像するに足る。

待てども/\遣つて來ぬので、ハンマーを持つて往還をコツ/\穿ち、打石斧の埋れたのなど掘出して居たが、それでも來ない。仕方が無いので此方の二人は、先きへ寺の中に入つた。

其後へ自轉車隊が來て、居合せた農夫に、二人連の、人相の惡い男子が、此邊をうろ/\して居なかつたかと問うて見ると、農夫頗る振つた答へをした。

『はア今の先き、二人連で、何んだか知んねえが、金槌を持つて、往來を擲きながら歩いて居たツけ』

金槌で往來を擲くとは奇拔である。大笑ひをして、自轉車隊は寺に入つた。

四人合して頼母を乞うて見ると、住職は不在とある。

江見水蔭の他の作品