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TORENDIA

裸身の女仙

本文約14,300字 ・ 読了時間 約29分

あらすじ(AIが作成しました)

碓氷峠で捨て子として育ったお鳥は、赤い髪と碧い瞳を持つ不思議な美貌の持ち主である。かつての軽業一座の仲間・源吉から、浪人・萩江鞍馬がお鳥の素性を探していると告げられる。お鳥は萩江との面会を重ね、自分が異国の血を引く過酷な運命を背負った娘であることを知る。やがて萩江の懸命な奔走により、二人は追っ手や獣の脅威を退け、安穏な道を模索する。数奇な境遇に翻弄されながらも惹かれ合う男女の姿を描く物語である。

野村胡堂

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綱渡りの源吉が不思議な使い

「姐御」

「シッ、そんな乱暴な口を利いてはいけない」

「成程、今じゃ三千石取のお旗本のお部屋様だっけ、昔の積りじゃ罰が当らア」

芸人風の若い男は、ツイと庭木戸を押し開けて植込の闇の中へ中腰に潜り込みました。

迎えたのは、二十一二の不思議な美しい女です。

武家風にしては、少し派手な明石縮の浴衣、洗い髪を無造作に束ねて、右手の団扇をバタバタと、蚊を追うともなく、話し声を紛らせます。不思議に美しい――と言ったのは、決して無責任な形容詞ではありません。月の光と、縁に吊した灯籠と、右左から照らされたこの女の顔は、全く、想像も及ばぬ不思議な美しさだったのです。首筋に束ねた髪は燃え立つように赤い上、大きく波打って、二つの瞳は碧海を切り取ったように碧く、上丈は五尺二三寸、肌の色は、桃色真珠に血を通わせたような、言いようの無い美しさに匂うのでした。

この一風変った美しさを、人によっては、不気味と見る人もあるでしょうが、この邸の主人、安城郷太郎は、又なきものに寵愛して、本妻の亡き後は、一にもお鳥、二にもお鳥、お鳥でなければ、夜も日も明けぬ有様だったのも無理のないことです。

「そんな嫌な事を言っておくれでない――、それはそうと、あれほど此邸の側へも寄らないようにと言って置くのに、何うして潜り込んで来たのだえ、源吉」

お鳥はたしなめるように、斯う言い乍らも、幾年振りかで逢った、一座の弟太夫、あの綱渡りのうまい源吉を、世にもなつかしく眺めるのでした。

「姐御、すまねえ、俺だってこんな、泥棒猫見たいな恰好までして、人の家へ忍び込み度くはねえが、二年振りで江戸へ帰って来ると、矢も楯もたまらず姉御に逢い度くなったんだよ」

源吉は、この二つばかり年上の美女を物悲しく見上げました。小さい時から一座に育って、恋というにしてはあまりに親し過ぎる二人は、手を取り合って心ゆくばかり話すか、それとも、二匹の犬っころのように、存分に喧嘩でもし度いような、悩ましい衝動をどうすることも出来ませんでした。

「皆んな丈夫かい」

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