銭形平次捕物控
本文約13,000字 ・ 読了時間 約27分
あらすじ(AIが作成しました)
石原の利助が何者かに銭を投げつけられ眼に大怪我を負う。疑いをかけられた銭形の平次は、利助が預かっていた徳三郎を自ら引き取り、潔白を証明するために真の下手人を探し始める。長柄の武器を扱う鳥刺しの手練という推理から、徳三郎が関与している疑念を抱き、平次は自らを標的に誘い出すことで真相を明らかにする。事件解決後、平次は誤解を解いた利助と和解し、再び十手捕縄を預かる日々へと戻っていく。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
💰 この本を応援する(投げ銭)
一
石原の利助が大怪我をしたという噂を聞いた銭形の平次、何を差措いても、その日のうちに見舞に行きました。
同じ十手捕縄を預かる仲間、昔は手柄を張合った気まずい仲でしたが、利助も取る年でいくらか気が挫けた上、平次の潔白な侠気が、何より先に、娘のお品を動かして、今では身内のように付き合っている二人だったのです。
「兄哥、災難だったそうだね。一体、どうしたことなんだ」
案内されて、中へ通った平次、お品の勧める座蒲団を押やって、利助の枕元に膝行り寄りました。
「平次兄哥か、わざわざ有難う。なアに、何でもありゃアしない、言わば、俺が間抜けなんだよ――」
妙に苦い口調で、利助は半面晒布で包んだ顔をねじ向けました。
「眼をどうかしたっていうじゃないか」
「それがこうなんだ、――昨夜、もう蚊もいないし、涼しくて良い心持だから、縁側へ籠枕を出して、無精なようだが、ついウトウトとやると、いきなりハッと眼へ来たものがある」
「ヘエ」
「眼を開いていりゃア、間違いもなく眇目にされたが、幸いつぶっていたから、眉から瞼へかけて恐ろしい傷だ。球も少しはやられたかも知れないが、白眼だから、傷になっても、見えなくなるような事はあるまいと外科は言うよ」
利助はそれでも、床の上へ起き直って、まだ腹立たしさが納まらぬといった調子に、拳固で自分の膝を叩いております。
「そいつは災難だったね、何が一体飛込んで来たんだ」
「銭だよ」
「えッ」
「ちょっと見は、棒で突いたようだが、後で見ると、縁の下に、肉の厚い永楽銭が一枚落ちていたんだ。こいつでやられたことは間違いのねえところだ」
「ヘエ――」
「余程腕の利く奴が、植込みの中から、銭を投りゃアがったんだよ」
「…………」
「どんな怨みがあるか知らないが、太い野郎じゃないか。捕まえたら、眼球でもくり抜いてやろうと思っている」
たった一つの眼を光らせて、一徹な歯を喰いしばる利助の気持を、平次はもとより察し兼ねたわけではありません。