TRENDIA CLASSIC

銭形平次捕物控

野村胡堂

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「平次、少し骨の折れる仕事だが、引受けてはくれまいか」

若い与力の笹野新三郎は、岡っ引風情の銭形平次に、こんな調子で話しかけました。

「口幅ったいことを申すようで恐れ入りますが、お頼みとあれば、どんな事でも、旦那」

先代から厄介になっている銭形の平次としては、首をくれと言われても、断られた義理ではありません。それに平次も笹野新三郎に劣らず、若さと覇気と、感激性を持っていた頃のことです。

「ほかではない――、先ほど一人の老女が訪ねて来て、大変なことを頼んで行ったんだ」

「ヘエ――」

「四谷北町の小永井鉄馬殿、二百五十石を食んで、安祥旗本の有名な家柄だ――、その方が中風で、弟の滝三郎というのが後見をしているが、どうも面白くないことがある」

「ヘエ――」

「というのは、鉄馬殿は公儀へお届け済みの病人、半身不随で身動きも自由でないのを幸い、手の付けようのない放蕩者で一時勘当までされた、弟の滝三郎父子が乗込み、兄の鉄馬殿を、土蔵の中に押し込めて、犬猫のようなひどい目に逢わせ、自分が兄の家を乗っ取って、倅文五郎に跡を継がせるつもりらしいというのだ」

「ヘエ――太え野郎があったもので」

「私のところへ来たのは、鉄馬殿の娘浪江を、藁のうちから育てた、加世という乳母で、用事にかこつけて、土蔵の中に入り込み、直々鉄馬殿に頼まれて、ここまで隠れてやって来たというのだ――」

「ヘエ――それは気の毒でございますが、旗本のお家騒動を、町方へ訴え出るのは、少し筋違いじゃございませんか」

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