一
屑屋の周助が殺されました。
佐久間町の裏、ゴミ溜めのような棟割長屋の奥で、魚のように切られて死んでいるのを、翌る朝になってから、隣に住んでいる、蝮の銅六という緡売りの、いかさま博奕を渡世のようにしている男が見付け、町内の大騒動になったのです。
周助はもう六十に手の届いた男、鉄砲笊を担いで江戸中を廻り、古着、ガラクタ、紙屑までも買って歩いて、それを問屋に持込み、わずかばかりの口銭を取って、その日その日を細々と送っている屑屋ですから、人に怨まれる筋などのあるべきはずもなく、そうかといって泥棒につけ狙われるほど、纏まった貯えのありそうな人間でもなかったのです。
ガラッ八の八五郎は、平次の指図でとにもかくにも飛んで行きました。
「八兄哥、もう遅いよ、下手人は挙がったぜ」
それを迎えて、路地一パイの大きな顔を見せるのは、お神楽の清吉です。
「ヘエー、そいつは手廻しがよかったね」
ムッと来たのを顔にも出さずに、この縄張荒らしに微笑をさえ見せるように、近頃の八五郎は鍛錬されていました。が、その微笑の苦渋な歪みは、八五郎の意志ではどうすることも出来ません。
「三輪の親分が、蝮の銅六を挙げて行ったよ。今頃は番所で調べているだろう。蝮と言われた男だから、どうせお白洲で石でも抱かせなきゃ、素直に白状する野郎じゃあるめえ」
お神楽の清吉はそう言って、骨張った顎を撫でるのです。元は三河島の馬鹿囃子に入っていたという清吉、いつの間にやら三輪の万七の子分になって、事ごとにガラッ八の向うを張っている岡っ引でした。
ガラッ八は、清吉の嫌がらせを聞き流して、屑屋の周助の家に入りました。入口の土間と、六畳一と間、それにお勝手と便所が付いたきり、見る影もなく住み荒らした長屋ですが、入口の土間は手入れ次第では、小さな店にもなるように出来たもので、周助はそこへ買い溜めのガラクタで、問屋で値の出なかったものや、古道具屋に持込んで、いくらかの利潤を見ようとしたものを、順序も系統もなく積み重ねて置きました。