銭形平次捕物控
本文約14,900字 ・ 読了時間 約30分
あらすじ(AIが作成しました)
銭形平次は八五郎と共に、麹町で起きた娘殺し事件に関心を寄せる。大泥棒のお狩場の四郎を名乗る人物から挑戦的な手紙を受け取った平次は、現場である桜屋へ足を運び、奉公人たちから聞き取りを行う。捜査の中で平次は、桜屋の奉公人である谷五郎が主人の娘を殺害した犯人であること、そして下女のお照が亡き父の復讐心から事件に関与した経緯を明らかにする。平次は事件を解決し、悲劇的な境遇のお照に温かな救いの手を差し伸べる。
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一
「親分の前だが、この頃のように暇じゃやりきれないね、ア、ア、ア、ア」
ガラッ八の八五郎は思わず大きな欠伸をしましたが、親分の平次が睨んでいるのを見ると、あわてて欠伸の尻尾に節をつけたものです。
「馬鹿野郎、欠伸に節をつけたって、三味線には乗らないよ」
「三味線には乗らないが、その代り法螺の貝に乗る」
「呆れた野郎だ、山伏の祈祷をめりやすと間違えてやがる」
平次は大きな舌打をしましたが、小言ほど顔が苦りきってはおりません。
「全く退屈じゃありませんか、ね親分。こんな古渡りの退屈を喰っちゃ、御用聞は腕が鈍るばかりだ。なんかこう胸へドキンと来るような事はないものでしょうか」
「御用聞が暇で困るのは、世の中が無事な証拠さ。それほど退屈なら、跣足で庭へ降りて、水でも汲むがいい、土が冷えていてとんだ佳い心持だぜ」
銭形平次は相変らず、世話甲斐のない、植木の世話に余念もなかったのです。――秋の陽は向うの屋根に落ちかけて、赤蜻蛉がわずかばかり見える空を、スイスイと飛び交わす時分、女房のお静はもう晩飯の仕度に取りかかった様子で、姐さん被りにした白い手拭が、お勝手から井戸端の間を、心せわしく往復している様子です。
「せっかくのお言葉だが、あっしが世話をすると、植木がみんな枯れっちまいますよ」
ガラッ八は良心に愧じる様子もなく、つづけざまにお先煙草をくゆらして、貧乏ゆるぎをする風もありません。
「いい心掛けだ。――その気だからだんだん縁遠くなる」
「へッ、――縁遠くなる――と来たね。驚いたね、どうも」
八五郎はニヤリニヤリと顎を撫でております。
「先刻から、退屈を売物にしているようだが、いったい何か言いたい事でもあるのかい。物に遠慮のある性質でもあるめえ。用事があるなら、さっさと言ってしまったらどうだ」
「えらいッ、さすがは銭形の親分。天地見通しだ」
「馬鹿だなア」
「ね、親分、聞いたでしょう。麹町六丁目の娘殺し」
「聴いたよ。桜屋の評判娘がゆうべ人手に掛って死んだってね。――けさ八丁堀の組屋敷へ行くとその噂で持ちきりだ」