銭形平次捕物控
本文約10,600字 ・ 読了時間 約22分
あらすじ(AIが作成しました)
正月六日の本郷菊坂で、五人の子供が忽然と姿を消す。銭形の平次と八五郎が調査に乗り出す中、行方不明だった子供の一人が戻るが、再び姿を消し、平次は鋳掛屋の権次の不審な動きを追う。一連の出来事は、取り潰しとなった山崎家の財宝を私物化しようとする側用人丹下村右衛門の暗躍によるものだった。平次は村右衛門が隠した土蔵へ踏み込み、閉じ込められた子供たちを救出する。主家の財宝を狙い、邪魔な子供を封じ込めた権力者の非道な画策を平次が暴く物語である。
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一
「親分、変なことがあるんだが――」
ガラッ八の八五郎がキナ臭い顔を持ち込んだのは、まだ屠蘇機嫌のぬけ切らぬ、正月六日のことでした。
「何が変なんだ、松の内から借金取りでも飛込んだというのかえ」
銭形の平次は珍しく威勢よく迎えました。ろくな御用始めもないので、粉煙草ばかりせせって、心待ちに八五郎の来るのを待っていたのです。
「借金取りや唐土の鳥には驚かねえが、――こいつは全く変ですぜ、親分」
「だから何が変だと言ってるじゃないか」
「一町内の子供が五人、煙のように消えてなくなったのは、変じゃありませんか、親分」
ガラッ八の小鼻は、天文を案ずるように脹れます。
「子供が五人揃って消えた?――そいつは抜け詣りだろう」
平次は事もなげです。そのころ子供たちが誘い合せて、親の許しを得ずに、伊勢詣りの旅に出ることがよく流行りました。伊勢詣りとわかれば箱根の関所もやかましいことは言わず、先々の宿も舟も、何かと便宜を与えてくれる世の中だったのです。
「七つから九つまでの子供ですぜ、その中には女の子が二人いますよ」
「なるほどそいつは少し変だな」
「その上、夕方かごめかごめかなんかやって遊んでいて、不意に見えなくなった。菅笠も柄杓も仕度をする間がありませんよ」
どんな無鉄砲な抜け詣りも、それくらいの用意はあるべきはずです。
「神隠しかな」
平次はいつの間にやら、坐り直しておりました。
「そんなものはあるでしょうか、親分」
人間が不意に見えなくなって、何日か何年かの後、ヒョックリ現れるのを、昔は羽黒や秋葉の天狗のせいにして、これを神隠しと言ったのです。その中には誘拐や、迷子や、記憶の喪失や、借金逃れもあったでしょうが、昔の人はそんな詮索をする気もないほど鷹揚だったのでしょう。
「…………」
「神や仏が、そんな虐たらしい事をする道理はないじゃありませんか、ね親分。五人の子供の親達の嘆きは、見ちゃいられませんよ」
「…………」
「何とかしてやって下さいよ」
「どこだえ、それは? いつのことなんだ」
平次はようやく乗出しました。
「本郷の菊坂で」
「フーム」