銭形平次捕物控
本文約10,000字 ・ 読了時間 約21分
あらすじ(AIが作成しました)
銭形平次のもとへ、かつて捕らえた大泥棒の形見として二千両を譲るという怪しげな手紙が届く。同時期に御用聞の関口の太助が遺体となって発見された。平次は現場に残された痕跡から神津右京の屋敷を訪れ、隠されていた御用金と、幼い吉弥を狙った恐るべき陰謀の真相を解き明かす。お江野とお鳥という姉妹が画策した悪事に対し、平次は投げ銭を武器に立ち向かい、神津家を揺るがす危機を救い出す様子を描く。
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一
「親分、変なことがあるんだが――」
ガラッ八の八五郎は、大きな鼻の穴をひろげて、日本一のキナ臭い顔を親分の前へ持って来たのでした。
「横町の瞽女が嫁に行く話なら知ってるぜ。相手は知らないが、八五郎でないことは確かだ。今さら文句を言ったって手遅れだよ八。諦めるがいい」
銭形平次は無精髯を抜きながら、ケロリとしてこんなことを言うのです。お盆過ぎのある日、御用がすっかり暇になって、涼みに行くほどのお小遣いもない退屈な昼下がりでした。
「冗談じゃありませんよ。横町の瞽女はああ見えても金持だ。こちとらには鼻も引っかけちゃくれませんよ、へッへッ」
「嫌な笑いようだな。さては一と口申込んで小気味よく弾かれたろう」
「へッ、弾ねたのはこっちで」
「うまく言うぜ」
「ところで親分変な話の続きだが――」
「そうそう変な話を持って来たんだね。瞽女の嫁入りの話でないとすると、叔母さんがお小遣いでもくれたというのか」
「交ぜっ返しちゃいけません。この手紙ですよ、親分」
八五郎は懐中から一通の手紙を出すと、畳の上を滑らせるように、平次の前へ押しやりました。
「何? 手紙」
「達筆で書いてあるから、よくは読めねえが、おおよその見当は、二千両という大金を、この春処刑になった大泥棒の矢の根五郎吉が、このあっしに形見にやるという文句だ。手紙を出した主は五郎吉の弟分で、兄よりも凄いと言われた彦徳の源太――」
「お前へもそんな手紙が行ったのか、八」
銭形平次の声は急に緊張しました。
「すると、親分は?」
「知っているよ。いや、知っているどころの騒ぎじゃない。俺のところへもそれと同じ手紙が来ているんだ」
「ヘエ――」