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TORENDIA

怒れる高村軍曹

本文約11,500字 ・ 読了時間 約24分

あらすじ(AIが作成しました)

聯隊で最も古参の軍曹である高村は、曹長への昇進を目標に新兵教育に情熱を注ぐ。軍隊内に蔓延する不合理な制裁を嫌悪し、部下を模範的な軍人に育て上げようと模索するが、対立する副官の差し金による配置転換や、心を開かない初年兵の存在に苦悩する。ある日、班内から脱走兵が出たことを発端に、高村は積年の鬱屈や不安を募らせる。その後、ささいな理由で兵を殴打したことが発覚し、厳正な処分が下される窮地に追い込まれた際、高村は極限の憎悪と怒りから再び衝動的な行動へ走る。

新井紀一

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一

消燈喇叭が鳴つて、電燈が消へて了つてからも暫くは、高村軍曹は眼先きをチラ/\する新入兵たちの顔や姿に悩まされてゐた。悩まされてゐた――と云ふのは、この場合適当でないかもしれない。いざ、と云ふ時には自分の身代りにもなつて呉れる者、骨を拾つても呉れる者、その愛すべきものを自分は今、これから二ヶ年と云ふもの手塩にかけて教育しようとするのであるから。

一個の軍人として見るにはまだ西も東も知らない新兵である彼等は、自分の仕向けやうに依つては必ず、昔の武士に見るやうに恩義の前には生命をも捨てゝ呉れるであらう。その彼等を教育する大任を――僅か一内務班に於ける僅か許りの兵員ではあるが――自分は命じられたのだ。かう思ふ事に依つて高村軍曹は自分が彼等に接する態度に就ては始終頭を悩まされてゐた。で、眠つてる間にもよく彼等新兵を夢に見ることがあつた。彼はどんな場合にも、自分の部下が最も勇敢であり、最も従順であり、更に最も軍人としての技能――射撃だとか、銃剣術だとか、学術に長じることを要求し希望してゐた。

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