ロマンチツクな絵本
本文約1,400字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
黄色いアトリエに現れる二匹のトカゲ、網を張る蜘蛛、森に迷い込む少女など、日常の風景に潜む幻想的な情景を詩的に綴る短編集。寝床で過ごす夜の静寂、南京玉を糸に通す二人の少女の様子、絨毯の上で眠る銀色の猫といった、身近な出来事や動植物の変容を描き出す。夢と現実の境界が曖昧な世界で、アトリエの主人が捉えようとする微かなリズムや、そこに宿る美しさを静謐な筆致で描き、芸術的感性を静かに投影する作品集である。
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黒いトカゲ 弱い外光の中、舟底椅子にもたれてウトウトと昼寝をしたのだがさめた。
ぼんやりした日の中に、黄色いアトリエの壁が見える。アカシヤの影像が、ぼんやりとうつる。小さい小さい姫蔦が、あちらこちらのびて、一つの波紋を作つて居る様だ。
チヨロチヨロと赤いトカゲが出て来た。
チヨロチヨロと黒いトカゲが出て来た。
にらみ合つた二匹のトカゲ一緒になつて遊び出した。
黒いトカゲが先に赤いトカゲが後に、二匹とも揃つて蔦の中に逃げた。
僕の目はまたウトウトとのろいものうい眠りにおそはれた。
くも 黒いビロード色の蜘蛛が灰色の空の中で上へ登つたり、下へ降りたりする。
ヒマラヤ杉の葉は水をふくんで美しい。
その水玉はつめたい水をガラスの中に入れた様に、つめたいあせの様に美しい。
くもが僕の幻想の中で網をはつた。
予期した様に
くもが予期した様に
僕が予期した様に
カドミユームの蛾が飛んで来た。而し水族館の魚の様に霞の中のその蛾は又飛んで行つた。
待つた 待つた 待つた 而しもう蛾は来ないかも知れない。
森 一つの日影をも差し込まない楡と樫の木で出来た鬱蒼とした森
あらゆる雑草はのびて怠慢な生活を続けてゐる。
美しい水と清い空気は膚に軟かい不安をあたへる。
靴の音が聞えてクリーム色のビロード服を着た少女が静かにこの森の中に入つて来た。
手を耳に何にかの囁きを聞いたその少女は、森の中に、いくらかの時間をウツトリと喜んでさまよつた。
何かのリズムを聞いたこの少女は、一歩、その音に近づかうとした。
楡の葉末に住む森の心は思はず微笑を笑つた。
ランプ 寝床に入つて本を読んだ。頁を繰る音、シンシンとする夜、ランプの光は軟かく温かく不安な人間の生活を保護する、軽い眠におそはれた。
ランプをけす、カーテンのない黒い窓から冷たいすき通つた清潔な月光が入る。床に落ちたその光をゆるやかにおつた自分は、つめたい、ブルツとする程つめたい小さな星を見た。
南京玉 二人の少女が並んで南京玉を糸に通した。
病身勝な白い服の似合ふ子は青緑、銀青、青、黄と細い糸に静かに通した。