黄色い鋼鉄船
本文約770字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
北の窓から光が射し込むアトリエで休息をとる画家が、黄色い船体に赤いジャケットを纏った青年たちが乗り込む夢を見る。行先もわからぬまま出発の準備を整える精鋭たちに触発された画家は、彼らと共に新芸術の開拓を目指す宣言文を綴る。若さと情熱を抱き、未知の地平へ向けて突き進む鋼鉄船の姿を通じ、新たな世代の幕開けと芸術への挑戦への意志を詩情豊かに綴る。
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高い北の窓から朗かな光線が流れ、ストーブは居心地よく調節がとれた。整頓されたアトリエで画を描く事は実に気持ちがよい。
一時間、二時間、三時間。
少つとした疲労がくる。ソフアーに横になる。ウトウトと眠くなる。
安心とつかれが同時に自然な安眠をさそつたのだ。
○
彼等の全勢力を尽して築き上げた鋼鉄の船、エンヂンは完全に燃えて赤い火を吹き、船体は黄色に塗られた。船員は全部赤いジヤケツを身軽に着込み、大きな大きな靴をはいてガンヂヨウに大船に立つて並んでゐる。
船長も居なければ事務長も居ない。パイロツトも居ない。行先さえもわからない彼等の大きな船。
而し彼等は彼等の部処を完全に守れる豊潤な頬を持つた青年達。
正に出発をしようとしてゐる。
○
肩を誰かにたゝかれた。
びつくりして目をさます。
真剣な激情的な視線を僕は僕の体中に感じた。
僕はすぐ立ち上つて前進した。
そうしてデスクの上に白い紙を展げ宣言文を書き始めた。
「僕はかねがねからこれ等の人達に魅力を感じ、シツトをほしいまゝにして居たのだ。そうしてそれ等の強い刺戟の中に飛び込む事は、僕にとつて大きな幸ひだ。これ等の精鋭な新人達と共に新芸術の研磨開拓に精進し、新しいゼネレーシヨンの実現に全力を尽す事は、男子一生の仕事として愉快だ。勿論僕は僕達が既知数だとは云ひ得ない。熱と若さとをふくむ未知数なのだ。未知数こそ僕達の友でこそあるのだ。」
○
各員各部処について大いに元気だ。
ドラが鳴つて、スクリユーは十三の急廻転を始めた。
グン/\前進。
前進、前進、前進。
この巨大な行先を持たない鋼鉄船は何処まで進むか。
進め、進め、進め、大きな船
幸ひ空には緑色の雲さえも見えない
暴風雨が来ても、如何に強い海流が来ても、警報を出さないこの大きな黄色の船。
或ひは暗礁に乗り上げるとも、
前進、前進、前進。
(「アトリヱ」昭和五年十二月)
完