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TORENDIA

太陽を呑む赤い老星の秘密

本文約2,700字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

夏の夜空に輝くさそり座の主星アンタレスを軸に、星の進化論の変遷を綴る。巨大な赤ん坊とされた説から、老成した星へと変わる学説の推移に触れ、核融合というエネルギー源の発見が星の生涯への理解を一変させた様を描く。また、人工衛星やロケット技術の進展に伴う近隣空間の研究と、遠い宇宙探究の関わり、さらには「宇宙」や「空間」という言葉の定義を巡る考察を通じて、天文学者が星を見つめる視点を記す。

畑中武夫

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🎧 太陽を呑む赤い老星の秘密 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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そろそろ夏が来る。

夏の空の星で、ぼくが一番なつかしいのは、さそり座とその主星アンタレスである。

中学初年のころ、「子供の科学」や「科学画報」の星座案内をたよりに、熊野川の川口近くの河原に立ってこの星座をながめた。

アンタレスは赤い星である。アンタレスの名は、「火星の敵」という意味だそうである。赤い星、火星に対抗するほど赤味をおびた、そして明るい星ということであろう。

アンタレスはさそりの心臓である。向って右、つまり西の方に巨大なさそりの爪がある。アンタレスから左下にならぶ星は、ゆるい曲線でSの字の下半分を書いて、いかにもさそりの尾を想わせる。星図をたよりにさそりの星々をたどって、最後にこの尾の曲線を見つけたとき、ぼくはどうやら星の病いにとりつかれてしまったらしい。

アンタレスは南の空であまり高くない。ことにこの星が西へ寄ったときは、かなり地平に近くなって赤い星の光がゆらめく。いかにもあえぎあえぎ西の空に向っているようである。

アンタレス自身はまことに巨大な星である。直径が太陽の二百三十倍もあるというから、もし太陽とアンタレスが入れかわったとしたら、地球の軌道がちょうど呑まれるくらいである。こういう大きな星で、しかも色が赤色をおびた温度の低い星は、ある時代には、きわめて老齢の星と思われていた。あえぎあえぎ西へ向うこの星の姿を、いかにも年老いた星の最後の姿にふさわしい、と表現した文章を読んで、まったくそのとおりだと思った。

その後の説では、こういう低温の巨大な星は、生れて間もない星と訂正された。いわば巨大な赤ん坊である。その説によれば、この星はこれから次第に縮んで、やがてシリウスのような青白い光の星になり、その後は再び冷えるけれども大きさは変らず、ちょうど太陽のような星を経て、ついには暗黒の星になると考えられたのである。ぼくたちが大学を出た頃は、これでは不満足なことはわかっていたけれども、これ以外にどう考えていいかわからなかった。

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