五所川原
本文約690字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
五所川原の叔母を訪ねた幼少期の記憶を中心に、郷里での体験を綴る。旭座の舞台開きに感動した思い出や、そこで発生した火災と映写技師への関心を回想するほか、夜道でどぶに落ちて通りがかりの男に助けられた際の恥ずかしい出来事を描く。外見をからかわれる作者に対し、唯一優しく接してくれた叔母への慕情を軸に、遠い過去の情景と人々の温もりを辿るエッセイである。
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叔母が五所川原にゐるので、小さい頃よく五所川原へ遊びに行きました。旭座の舞臺開きも見に行きました。小學校の三、四年生の頃だつたと思ひます。たしか友右衞門だつた筈です。梅の由兵衞に泣かされました。舞臺を、その時、生れてはじめて見て、思はず立ち上つてしまつた程に驚きました。この旭座は、そののち間もなく火事を起し、全燒しました。その時の火焔が、金木から、はつきり見えました。映寫室から發火したといふ話でした。さうして、映畫見物の小學生が十人ほど燒死しました。映寫の技師が罪に問はれました。過失傷害致死とかいふ罪名でした。子供にも、どういふわけだか、その技師の罪名と運命を忘れる事が出來ませんでした。旭座といふ名前が「火」の字に關係があるから燒けたのだといふ噂も聞きました。二十年も前の事です。
七ツか、八ツの頃、五所川原の賑やかな通りを歩いて、どぶに落ちました。かなり深くて、水が顎のあたりまでありました。三尺ちかくあつたのかも知れません。夜でした。上から男の人が手を差し出してくれたのでそれにつかまりました。ひき上げられて衆人環視の中で裸にされたので、實に困りました。ちやうど古着屋のまへでしたので、その店の古着を早速着せられました。女の子の浴衣でした。帶も、緑色の兵古帶でした。ひどく恥かしく思ひました。叔母が顏色を變へて走つて來ました。
私は叔母に可愛がられて育ちました。私は、男ツぷりが惡いので、何かと人にからかはれて、ひとりでひがんでゐましたが、叔母だけは、私を、いい男だと言つてくれました。他の人が、私の器量の惡口を言ふと、叔母は、本氣に怒りました。みんな遠い思ひ出になりました。
完