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【はじめに】
「10年後、AIに仕事が奪われる」
そう言われて久しい。かつてこのフレーズは、どこか遠い未来のSF映画や、一部の野心的な研究者たちの予測に過ぎないと笑い飛ばされていた。しかし、2020年代半ばを迎えた今、誰もそれを笑い飛ばすことはできない。なぜなら、それが「予言」から現実の「分岐点」へと姿を変えたからだ。
今、ネットやSNSを開けば、「AIに業務を代替されて転職先が見つからない」「新卒の採用枠が絞られている」といった悲鳴が溢れている。しかし、私たちが直面している問題の根深さは、個人の雇用や「仕事が減るかどうか」といったミクロなレベルにとどまらない。私たちが目を背けてはならない真の実態、それは国家レベルでの「AI植民地化」という危機である。
日本が直面する「2つの危機」
私たちが直面している危機は、大きく分けて2つの構造に分解できる。
1. 個人の危機:AIによる「下積みの消失」と代替――AIの真の脅威は、熟練の技術を奪うことだけではない。これまで人間がスキルを身につける過程で担っていた「下積み業務」や「アシスタント業務」を根こそぎ代替してしまうことにある。新人がスキルを習得する「入口」が閉ざされ、個人の格差が二度と埋まらないレベルで固定化されつつあるのだ。
2. 国家の危機:巨大な「デジタル赤字」と主権の喪失――日本人が日常的に使うクラウド、検索、SNS、動画配信、そして生成AIサービス――その大半は米国プラットフォーム企業の提供によるものだ。日本がIT化やAI活用を進めれば進めるほど、国内の資本が津波のように海外へ流入する構造が出来上がっている。財務省の国際収支統計によれば、日本の「デジタル関連収支(デジタル赤字)」は年間約6.7兆円前後に達しており、2030年には10兆円の大台を突破すると試算されている。
