藍色の蟇
本文約25,900字 ・ 読了時間 約52分
あらすじ(AIが作成しました)
藍色の蟇は、象徴的かつ幻惑的な言葉を紡ぎ、日常の中に潜む寂寥や倒錯した美意識を詩編として綴る。著者は、擬人化された動植物や独特な色合いの情景を重ね合わせ、現実と空想が交錯する内面世界を映し出す。本作は、詩集の形式を通じて、人間の不具な心性や悲哀、また官能的な美への執着を論じ、言葉の響きや色彩の調和によって、形のない孤独や憂いを静かに表現する、大手拓次の詩の世界を収める。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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藍色の蟇
森の宝庫の寝間に
藍色の蟇は黄色い息をはいて
陰湿の暗い暖炉のなかにひとつの絵模様をかく。
太陽の隠し子のやうにひよわの少年は
美しい葡萄のやうな眼をもつて、
行くよ、行くよ、いさましげに、
空想の猟人はやはらかいカンガルウの編靴に。
陶器の鴉
陶器製のあをい鴉、
なめらかな母韻をつつんでおそひくるあをがらす、
うまれたままの暖かさでお前はよろよろする。
嘴の大きい、眼のおほきい、わるだくみのありさうな青鴉、
この日和のしづかさを食べろ。
しなびた船
海がある、
お前の手のひらの海がある。
苺の実の汁を吸ひながら、
わたしはよろける。
わたしはお前の手のなかへ捲きこまれる。
逼塞した息はお腹の上へ墓標をたてようとする。
灰色の謀叛よ、お前の魂を火皿の心にささげて、
清浄に、安らかに伝道のために死なうではないか。
黄金の闇
南がふいて
鳩の胸が光りにふるへ、
わたしの頭は醸された酒のやうに黴の花をはねのける。
赤い護謨のやうにおびえる唇が
力なげに、けれど親しげに内輪な歩みぶりをほのめかす。
わたしは今、反省と悔悟の闇に
あまくこぼれおちる情趣を抱きしめる。
白い羽根蒲団の上に、
産み月の黄金の闇は
悩みをふくんでゐる。
槍の野辺
うす紅い昼の衣裳をきて、お前といふ異国の夢がしとやかにわたしの胸をめぐる。
執拗な陰気な顔をしてる愚かな乳母は
うつとりと見惚れて、くやしいけれど言葉も出ない。
古い香木のもえる煙のやうにたちのぼる
この紛乱した人間の隠遁性と何物をも恐れない暴逆な復讐心とが、
温和な春の日の箱車のなかに狎れ親しんで
ちやうど麝香猫と褐色の栗鼠とのやうにいがみあふ。
をりをりは麗しくきらめく白い歯の争闘に倦怠の世は旋風の壁模様に眺め入る。
鳥の毛の鞭
尼僧のおとづれてくるやうに思はれて、なんとも言ひやうのない寂しさ いらだたしさに張りもなくだらける。
嫉妬よ、嫉妬よ、
やはらかい濡葉のしたをこごみがちに迷つて、
鳥の毛の古甕色の悲しい鞭にうたれる。
お前はやさしい悩みを生む花嫁、
わたしはお前のつつましやかな姿にほれる。
花嫁よ、けむりのやうにふくらむ花嫁よ、
わたしはお前の手にもたれてゆかう。
撒水車の小僧たち
お前は撒水車をひく小僧たち、