般若心経講義
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あらすじ(AIが作成しました)
仏教の根本思想である「空」を解き明かす『般若心経』を解説する。本書は、否定と肯定を弁証法的に統一する空の概念や、迷いと悟りの分かれ目となる「因縁」の道理を説く。また、短く明瞭な経典の特質と歴史的背景に触れつつ、人生の苦を自覚し、信の心を持って真理を認識する重要性を説く。現代の混迷を打破し、新しい文化を建設するための空観の実践を促す一冊である。
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序
いったい仏教の根本思想は何であるかということを、最も簡明に説くことは、なかなかむずかしいことではあるが、これを一言にしていえば、「空」の一字に帰するといっていいと思う。だが、その空は、仏教における一種の謎で、いわば公開せる秘密であるということができる。
何人にもわかっているようで、しかも誰にもほんとうにわかっていないのが空である。けだし、その空をば、いろいろの角度から、いろいろの立場から、いいあらわしているのが、仏教というおしえである。
ところで、その空を『心経』はどう説明しているかというに、「色即是空」と、「空即是色」の二つの方面から、これを説いているのである。すなわち、「色は即ち是れ空」とは、空のもつ否定の方面を現わし、「空は即ち是れ色」とは、空のもつ肯定の方面をいいあらわしているのである。したがって、「空」のなかには、否定と肯定、無と有との二つのものが、いわゆる弁証法的に、統一、総合されているのであって、空を理解するについて、まずわれわれのはっきり知っておかねばならぬことである。
次に空をほんとうに認識するについて、もう一つたいせつなことがある。それは「因縁」ということである。『心経』には因縁について一言も説いてはいないが、因縁を十分に理解しないと、どうしても空はわからないのであって、端的にいえば、空と因縁とは、表裏一体の関係にあるのである。申すまでもなく因縁とは、「因縁生起」ということで、世間のこといっさいみなことごとく因縁の和合によって生じ起るということである。もとよりこのことは、説明を要しない自明の理であるにもかかわらず、われわれはこの自明の理にたいして、平素あまりにも無関心でいるのである。すなわち「因」より直接に果が生ずるがごとく考えて、因縁和合の上の結果であることに気づかないのである。しかもこれがあらゆる「迷い」の根源となっているのである。すなわち凡夫の迷いとは、つまり因縁の理を如実にさとらないところにある。別言すれば、因縁の真理を知らざることが「迷い」であり、因縁の道理を明らめることが「悟り」であるといっていい。