TRENDIA CLASSIC

だるまや百貨店

宮本百合子

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炉ばたのゴザのこっち側で、たけをが箱膳を膝の前に据え、古漬けの香のもので麦七分の飯をかっこんでいる。

あっち側のゴザの上にはまま母のトラが、帯なし袷せを前垂れで締めた小柄な姿を外の明るい方へねじむけて、口じゅうじじむさい泡だらけにしながらおはぐろをつけている。年は三十そこそこだのに銀杏がえしに結び、昔風におはぐろをつけるのであった。

たけをは炉の自在にかかっている鍋からゆっくり三膳目をよそいながら、裸石じきの流し場へ裸足で立って、しきりに唾をはいているまま母にきいた。

「みんなるすの?」

「おいさ。おじいさまはおじゅっさん(お住持さんという意味)へおいきなし、新は須田へいて貰うた」

「ふーん」

トラは自分より学問もあり、稼ぎもしている年かさのまま娘には何かにつけて遠慮し、よその人に向ってたけをさんと呼び、うちでは姉ちゃんと呼んだ。

たけをが箱膳をしまうと、トラは内気らしく、

「どら……」

と呟きながら、切戸のよこに据えた機へのぼった。

「きんのうのう、もう上ったのけ?」

「あいさ……早うせんことにゃ……納めものと講のかけ金で、頭痛してござるわな」

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