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TORENDIA

だるまや百貨店

本文約5,100字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

山陰地方の小さな町で、だるまや百貨店に勤める娘たけをは、劣悪な労働環境と生活の困窮に苦しむ。町では機屋が倒産し、農家の内職が広がっていた。百貨店店主の妻幾子は、寄宿舎の娘たちに家庭的な教育を説くが、実態は過酷な労働と監視であった。たけをは、寺への見栄や寄進に追い立てられる家業の厳しさや、資本関係で成り立つ地域社会の裏側を感じながら、女店員たちが搾取される日常を送る。本作は、地方の経済的苦境と資本主義下での労働実態を描く。

宮本百合子

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🎧 だるまや百貨店 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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一

炉ばたのゴザのこっち側で、たけをが箱膳を膝の前に据え、古漬けの香のもので麦七分の飯をかっこんでいる。

あっち側のゴザの上にはまま母のトラが、帯なし袷せを前垂れで締めた小柄な姿を外の明るい方へねじむけて、口じゅうじじむさい泡だらけにしながらおはぐろをつけている。年は三十そこそこだのに銀杏がえしに結び、昔風におはぐろをつけるのであった。

たけをは炉の自在にかかっている鍋からゆっくり三膳目をよそいながら、裸石じきの流し場へ裸足で立って、しきりに唾をはいているまま母にきいた。

「みんなるすの?」

「おいさ。おじいさまはおじゅっさん(お住持さんという意味)へおいきなし、新は須田へいて貰うた」

「ふーん」

トラは自分より学問もあり、稼ぎもしている年かさのまま娘には何かにつけて遠慮し、よその人に向ってたけをさんと呼び、うちでは姉ちゃんと呼んだ。

たけをが箱膳をしまうと、トラは内気らしく、

「どら……」

と呟きながら、切戸のよこに据えた機へのぼった。

「きんのうのう、もう上ったのけ?」

「あいさ……早うせんことにゃ……納めものと講のかけ金で、頭痛してござるわな」

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