本文へ移動
TORENDIA

正月とソヴェト勤労婦人

本文約4,100字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

ソヴェト同盟の勤労婦人たちが正月をどのように過ごすかをテーマにした対話形式の論考。元旦も平日として扱われ、宗教的な祭礼よりもプロレタリアートの階級意識を重視する社会体制を詳述する。労働者クラブでの集団的な記念行事や生産拡張のための五ヵ年計画、禁酒運動の推進、さらには託児所を備えた労働環境など、革命後のソヴェトにおける勤労女性の地位向上と社会生活の在り方を綴る。

宮本百合子

速度
🎧 正月とソヴェト勤労婦人 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 6

――ヤア、こんちは。

――こんちは! どうした、久しぶりだね。

――ウン。一時間ばかり暇かい?

――何用?

――今日は正月、ソヴェト同盟の勤労婦人たちがどんなに暮すか、知ってるだろうからききたいと思ってやって来たんだ。いつだったか支那のソヴェトの正月について面白い話をきいたこともあるから……。

――成程。……だがソヴェト同盟じゃ正月って云っても、大したことないよ。二年ばかり前、モスクワで初めての大晦日と正月を迎えた時、どんなにやるのかと思って楽しみにした。ところが勿論日本みたいに除夜の鐘が鳴るわけじゃなし、門松立てるわけじゃなし、元旦に下宿の神さんが「おめでとう」と一言云ったぎりで普通のパンと茶を食ったよ。ヨーロッパ諸国じゃ、日本でもブルジョアが自分達の子供に玩具を買ってやるついでに貧児へ所謂慈善をほどこすクリスマスってやつ、キリスト降誕祭、あれを十二月二十五日にうんと盛にやって、その勢で大晦日正月は越しちまうんだ。

――だって、お前、ソヴェト同盟じゃ、あんなにプロレタリアートの階級意識を眠らす毒薬として宗教撲滅運動やってるじゃないか、見たよ、ソヴェトで出してる面白い絵入りの反宗教雑誌を。

――確にそうさ。ソヴェト同盟のその運動は革命当時から着手されていた。ところが一九二八年の復活祭、降誕祭の時分はまだそういう祭りを相当賑やかにやってたんだ。……ところでこれを見たか?

――はじめてだ、何だい、この赤、緑、黄色の点ポツポツは。

――愉快だぜ、ソヴェト同盟は一九二九年の秋から暦をかえちゃったんだ。一九二八年――二九年の経済年度からソヴェトでは生産拡張の五ヵ年計画にとりかかった。

――そりゃもう知らない者ないよ。

宮本百合子の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本