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TORENDIA

芭蕉について

本文約6,600字 ・ 読了時間 約14分

あらすじ(AIが作成しました)

松尾芭蕉の俳諧を論じる随筆。武家として生まれながらも出奔し、俳諧の道へ進んだ芭蕉の生涯と、談林派の遊戯的な表現への反撥、そして「さび」という芸術境地に至る過程を辿る。西鶴や近松ら同時代の芸術家との比較を通じ、自身の感覚で対象の底を射抜くような烈しい精神の軌跡を浮き彫りにする。芭蕉の芸術が、形式や言葉の作法を追求しつつ、時代の変遷の中でいかに現代の我々に響く普遍的な価値を持ち続けているかを考察する。

宮本百合子

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芭蕉の句で忘られないのがいくつかある。

あらたうと青葉若葉の日の光

いざゆかん雪見にころぶところまで

霧時雨不二を見ぬ日ぞおもしろき

それから又別な心の境地として、

初しぐれ猿も小蓑をほしげなり

おもしろうてやがてかなしき鵜飼かな

馬をさへながむる雪のあした哉

住つかぬ旅の心や置炬燵

うき我をさびしがらせよかんこ鳥

雄大、優婉な趣は、

辛崎の松は花より朧にて

五月雨にかくれぬものや瀬田の橋

暑き日を海にいれたり最上川

荒海や佐渡によこたふ天の河

そして「枯枝に」がある。

枯枝に烏のとまりけり秋の暮

塚も動け我泣声は秋の風

あか/\と日は難面もあきの風

旅にやんで夢は枯野をかけ廻る

連句のなかにもまた独特な感覚がある。例えば、

このごろの上下の衆のもどらるゝ    去来

腰に杖さす宿の気ちがひ        芭蕉

二の尼に近衛の花のさかりきく     野水

蝶はむぐらにとばかり鼻かむ      芭蕉

芥子あまの小坊交りに打むれて     荷兮

おるゝはすのみたてる蓮の実      芭蕉

このような様々の情緒とつよい現実感の峯をなして、

閑さや岩にしみ入蝉の声

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