本文へ移動
TORENDIA

「我らの誌上相談」

本文約7,900字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

家庭の事情と結婚生活に悩む若い女性からの手紙に対し、資本主義社会における女性の苦境と、社会構造の矛盾を論じる。著者は、親や夫の勝手な都合に挟まれる個人の苦しみは、労働者階級の団結によって克服されるべきものだと説く。組織化の重要性を訴え、自らの解放と幸福のために、連帯を通じて社会の不合理と闘い続けるよう、具体的な行動指針を綴る随筆である。

宮本百合子

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 11

病母と弟を抱えて

お手紙拝見しました。あなたのお心持の入りまじった苦しいところはよくわかります。ましてあなたの場合、まだきまった対手が姿をあらわしていないから、いろいろそれを根拠として具体的な相談をすすめて行く条件が、あなた御自身にもわかっていない。いわば、空をつかむような心配です。

従って、私たちにしろ、山田さんと同じように実際の対手が出来た上で、家へ一緒に住むかどうかということを定めるしかないと云う返事のほか出来ません。

ただ、あなたの手紙で感じた一つのことを云いますと、それは、あなたがボンヤリながら、今の世の中にそういう境遇におかれた若い女の結婚難というものに恐怖を抱いていられるという事です。

夫と家へ一緒に住もうか住むまいか? 若い弟嫁と母とだけでは心配だという心持のかげには、自分の複雑な家庭の事情が、対手を面倒がらせ逃がしてはしまうまいかという焦慮がひそんでいると思います。

そして又実際、多くの男は、女に大した財産でもあれば別ですが、さもなければ女の実家の厄介は背負いたがらないものです。あなたの悩みも、つまりは、どの男でも妻であるあなたの実家の商売、病身な母などについて快よく心労をわけあってくれるとは云えないと感じているところにあるのでしょう。

こういう悩みをもつ若い女はあなた一人だと思ったら大ちがいです。都会にだって、幾千人あなたと同じ苦しみをもっている若い女がいるかしれません。

親は娘としてどこまでも自分に尽してほしがる。夫は夫で妻というものを夫の利益のためだけに考える。仲にはさまれ、切ないのは娘です。親からは、親をすてる気か! と云われ、男からは親の方が大切か! とやられ、到頭運命とあきらめ若い年月をただ工場の埃に埋もれて暮している人も少くないのです。

だが、何故今の世の中では、こういう結婚難があり、親の勝手、夫の勝手というものに若い女が挾まれて苦しむことが多いのでしょう。

わたし達は、その原因まで深くさかのぼって考えて見なければ、めいめいの境遇についても覚悟がきまらないと思います。

宮本百合子の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本