紅玉
本文約11,400字 ・ 読了時間 約23分
あらすじ(AIが作成しました)
初冬の郊外の原野で、展覧会に落選し疲弊した画工は、烏の仮装をした侍女や子供たちと出会う。子供たちが唄いながら画工の周囲を回ると、画工は意識を失ったまま異様に踊り出す。そこへ本物の烏の姿をした怪異が現れ、画工を餌食として狙う。その後、貴夫人と少紳士の幻影が浮かび上がり、不穏な空気が漂う中、画工は正気を取り戻し、自身の描いた絵の中に烏の姿が浮かび上がるのを目撃する。
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時。
現代、初冬。
場所。
府下郊外の原野。
人物。
画工。侍女。(烏の仮装したる)
貴夫人。老紳士。少紳士。小児五人。
――別に、三羽の烏。(侍女と同じ扮装)
[#改ページ]
小児一 やあ、停車場の方の、遠くの方から、あんなものが遣って来たぜ。 小児二 何だい何だい。 小児三 ああ、大なものを背負って、蹌踉々々来るねえ。 小児四 影法師まで、ぶらぶらしているよ。 小児五 重いんだろうか。 小児一 何だ、引越かなあ。 小児二 構うもんか、何だって。 小児三 御覧よ、脊よりか高い、障子見たようなものを背負ってるから、凧が歩行いて来るようだ。 小児四 糸をつけて揚げる真似エしてやろう。 小児五 遣れ遣れ、おもしろい。 凧を持ったのは凧を上げ、独楽を持ちたるは独楽を廻す。手にものなき一人、一方に向い、凧の糸を手繰る真似して笑う。
画工 (枠張のまま、絹地の画を、やけに紐からげにして、薄汚れたる背広の背に負い、初冬、枯野の夕日影にて、あかあかと且つ寂しき顔。酔える足どりにて登場)……落第々々、大落第。(ぶらつく体を杖に突掛くる状、疲切ったる樵夫のごとし。しばらくして、叫ぶ)畜生、状を見やがれ。 声に驚き、且つ活ける玩具の、手許に近づきたるを見て、糸を手繰りたる小児、衝と開いて素知らぬ顔す。
画工、その事には心付かず、立停まりて嬉戯する小児等をす。
よく遊んでるな、ああ、羨しい。どうだ。皆、面白いか。 小児等、彼の様子を見て忍笑す。中に、糸を手繰りたる一人。