TORENDIA
小説に用ふる天
然
泉鏡花
TORENDIA
小説に用ふる天然
本文約420字 ・ 読了時間 約1分
あらすじ(AIが作成しました)
晴雨や昼夜によって人の気分が変わるように、小説には天然(自然や情景)を欠かせないとし、自作「三尺角」や「葛飾砂子」も景色から人物を思い浮かべたと語る泉鏡花の創作論。
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🎧 小説に用ふる天然 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん
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小説を作る上では――如何しても天然を用ゐぬ譯には行かないやうですね。譬へば惚れ合つた男女二人が話をしながら横町を通る時でも、晴天の時と、雨天の時とは、話の調子が餘程違ひますからね。天然と言つても、海とか、山とかに限つたことはありません。室内でも、障子とか、襖とか、言ふものは、天然の部に這入つてもよからうと思ひます。だから其の室内の事を書く時でも、天然を見逃がす事は出來ません。また夜更けに話すのと、白晝に話すのとは、自から人の氣分も違ふ譯ですから、勢ひ周圍にある天然を外にする譯に行かないでせう。假に場所を東京市内に選んで、神田とすれば、又其處に特有の天然があります。何方かと言へば、私の作などの中には、景色を見てから、人物を考へ出した場合が多い。『三尺角』や、『葛飾砂子』などは深川の景色を見て、自然に人物を思ひ浮べたのです。然し天然を主にして、作意を害するやうな事は面白くありません。程よく用ゐたいものです。
明治四十二年一月
完