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TORENDIA

本当の愛嬌ということ

本文約1,300字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

戦争終結後の混乱した世相と生活の苦境の中で、政府が国民の親切への欲求を逆手に取り、愛嬌のある態度で権力を誇示する現状を論じる。同時に、かつて戦争を推し進めた勢力が、平和と生活の安定を真に守ろうと反対運動を続けた共産主義者たちを排除しようとする矛盾を指摘する。政治の本質とは愛嬌ではなく正直な道義にあると説き、戦争反対という観点からあるべき政府のあり方と民主主義への姿勢を考察する随筆である。

宮本百合子

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🎧 本当の愛嬌ということ / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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戦争中私たちは随分ひどい生活をしました。そして八月十五日が来た時、日本のすべての人々、とくに婦人たちの目には実に感慨深いなみだがうかんだと思います。これで惨虐なそして不合理な権力の抑圧は終ったと。戦争後私たちの生活は案外に複雑な矛盾で苦しみ、インフレーションで苦しんでいます。人の心も荒んでいます。こういう世相の中で私たちの求めているのは何でしょう。平和が来たというにふさわしい生活の安定と人間らしい心です。おたがいの親切を求めています。その心もちをたいへん巧みに捕えて、片山哲氏は首相になると早々街頭録音に出かけるし、新橋のきわで安井都長官が芋苗を売る手伝いをするし、大変親しみ易い政府がはじまったようです。小包米とか赤ん坊の牛乳、姙産婦用ラードの配給、これは根本的な食糧問題の危機とインフレーションによる私たちの生存の危機を根本的に改善するものではないけれども、今の事情はあんまりひどいから誰しもそれを無いよりはましと思います。

親切の態度、愛嬌のよさ、主婦や子供に振りまかれるおあいそ。政治と愛嬌とが結ばれた時、政治と不思議な人当りのよさが結ばれた時、若い娘が見知らぬ男からひどくあいそよく物をいいかけられた時のようなうす気味悪さを感じます。しかし孤独な生活に苦しみ愛情に飢えている若い娘はうす気味悪く思った自然の気持ちをまぎらされて甘言にひっかかります。

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