TORENDIA
兵馬倥偬の人
塚原蓼洲
TORENDIA
兵馬倥偬の人
本文約4,300字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
旧幕臣として生まれた著者が、幕末の動乱期に経験した過酷な青年時代を回想する。十七歳で定番として京都へ赴いた後、講武所で親父と合流して大阪へ移り、幕府の政策で関八州の開墾御用掛に従事した。鳥羽・伏見の戦いへ至る情勢の緊迫や、薩州邸焼打ち事件などの歴史的背景の中で、著者は剣術や軍事演習に追われながら奔走する。維新後、各地を転々として兵学校や集学所を渡り歩き、後に新聞記者として文筆業に就くまでを綴る。
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私は舊幕府の家來で、十七の時に京都二條の城(今の離宮)の定番といふものになつて行つた。江戸を立つたのが、元治元年の九月で、例の蛤御門の戰のあつてから二個月後の事である。一體私は親子の縁が薄かつたと見えて、その十七の時に兩親に別れてからは、片親と一緒に居る時はあつたが、兩親と一緒に居ることは殆んどなかつた。誠に私が非常な窮迫の折に死んだ母親の事などを考へると、今でも情けない涙が出る。
其中に將軍家の長州進發といふ事になつた。それが則ち昭徳院といふ紀州公方――慶喜公の前代の御人である。頗ぶる人望のある御人であつたが大阪の行營で薨ぜられたので、そこで慶喜公が其後を繼いで將軍となられたのである。
其頃、江戸の、今の水道橋内三崎町の所に講武所といふものがあつた。其所は幕府の家來が槍だとか、劍だとか、柔だとか、鐵砲だとかを稽古するところで、私の親父は其の鎗術の世話心得といふ役に就いて居た。で講武所總體は右の御進發の御供、親父も同じく大阪に滯在するうち徒目附といふ役に轉じた。そこで私も京都の方を廢して、親父と一緒に大阪に來て居た。
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