この文芸評論集には、ごく最近に書かれた数篇と、いくらかさかのぼって一九四五年の十二月ごろから書かれた数篇とがあつめられている。おしまいに別に収録されているバルザック、ジイドに関したものは、それよりもっと古く一九三七年ごろ書かれたものである。「歌声よ おこれ」から「一九四六年の文壇」「政治と作家の現実」「バルザックに対する評価」「バルザックについてのノート」などは一九四七年八月に出版された文学評論集『歌声よ おこれ』にあつめられていたものである。「一九四七年の文壇」「両輪」「世紀の分別」「三年たった今日」などは、はじめてこの本に集められた。
「三年たった今日」日本の民主化がどのように複雑困難な過程を辿っているかということを、文化、文学の課題としてとりあげている。平和とファシズム反対のためには、すべての正直な人民が働くものと作家とをとわず、戦争挑発と愚民的な文化、文学政策に対してどういう決意をもって行動しなければならないかについて、語りあおうとしている。個性の発展、知性の自由というものも、民主の民主的自立なしにありえないし、民主主義の達成は、ファシズムとの抗争なしにありえない。「両輪」から「三年たった今日」が書かれた期間に、日本では広い規模でファシズムと戦争挑発に対して日本人民としての独立とその文化を護る運動が組織された。(日本文化を護る会)自身の発展についてまじめに考えている多くの社会人、作家の間に、民主主義と平和を守るための活動が開始されたのもこの期間であった。(日本民主主義擁護同盟)
最近書いたものでもないバルザックやジイドに関するものがこの本に入っているのはこういうものにも一つの現代的意味があると思ったからであった。民主日本に発足しながら、今日まで日本と外国との文化交流は、むずかしい翻訳権問題で行き悩んでいる。外国の書籍を、せりでおとして翻訳を許可されるというような世界に珍しい現象さえ行われている。