情景(秋)
本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
十一月初旬の曇天から秋の夕映えまで、都市の日常で交錯する人々の断片的な情景を綴る。十一月の冷え込みの中で、マンドリンの合奏音や降り続く雨、枯れ葉を落とした梧桐や熟した柿の木といった庭先の変化を描写する。また、芝居帰りの喫茶店や盛り場で見かける通行人の装い、新議事堂落成祝の花電車、銀座での偶然の遭遇、そして部屋で眠る娘の姿など、通り過ぎる生活の機微や季節の移ろいを日記風に記録し、都市の空気に混じる不安や活気を映し出す。
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秋の景色(十一月初旬)
○曇り日 日曜。ちっとも風がない。
○すっかり黄色くなった梧桐の葉、
○その落葉のひっかかっている槇の木の枝
○きのうの雨でまだしめっぽく黒く見えている庭木の幹。
離れの方から マンドリンとピアノの合奏がきこえて来る。
◎ひどく雨が降っている。
○遠くの方で、屋根越しに松の梢がまばらに大きく左右へはり出した枝を ゆすっているのが雨中に見える。
○柿の木がすっかり葉をおとし、いくつかの熟した実を盛に雨にうたれている。
◎バスにのって戸塚の方へ出たら雨がザーザーふっている。バスの前方のガラスを流れている。
降りる頃には またやんでしまっていた。
◎芝居のかえり。初日で十二時になる(群盗。)アンキーとかいう喫茶。バーの女給。よたもん。
茶色の柔い皮のブラウズ。鼠色のスーとしたズボン。クラバットがわりのマッフラーを襟の間に入れてしまっている。やせぎすの浅黒い顔、きっちりとしてかりこんだ髪。つれの女の子、チェックのアンサンブル(赤、緑、黒的)黒いハンドバッグと手袋とをその男がもってやっている。このよた、ちっとも笑顔をせず。
「あっちへつけときましたから」
「おつけになって下さいましたの?」
「ええ」
〔欄外に〕
バアの女給。十二時頃 tea Room でポタージュをたべ トウストをたべる。ヴィンナ、トウストマダムという女 朱 赤と薄クリームの肩ぬき的な洋装、小柄二十四五位
夕方五時すぎ。
電車道のところを見るとさほどでもないが濠の側を見ると、濃くもやが立ちこめて四谷見附に入る堤が ぼんやりかすんで見える。電燈はそれにとけ込んでいる。
○電柱に愛刀週間[#「愛刀週間」に枠囲み]の立看板
◎右手の武者窓づくりのところで珍しく門扉をひらき 赤白のダンダラ幕をはり 何か試合の会かなにかやっている
黒紋付の男の立姿がちらりと見えた。
○花電車。三台。菊花の中に円いギラギラ光る銀色の玉が二つある
能の猩々。
子供の図
あとから普通の電車に赤白の幕をはったのがついてゆく。新議事堂落成祝のため。
〔欄外に〕