TRENDIA CLASSIC

一葉女史の「たけくらべ」を読みて

高山樗牛

1 / 3

本郷臺を指ヶ谷かけて下りける時、丸山新町と云へるを通りたることありしが、一葉女史がかゝる町の中に住まむとは、告ぐる人三たりありて吾等辛く首肯きぬ。やがて「濁り江」を讀み、「十三夜」を讀み、「わかれみち」を讀みもてゆく中に、先の「丸山新町」を思ひ出して、一葉女史をたゞ人ならず驚きぬ。是の時「めざまし草」の鴎外と、なにがし等との間に、詩人と閲歴の爭ありしが、吾等は耳をば傾けざりき。

一葉女史の非凡なることを、われ等「たけくらべ」を讀みてますます確めぬ。丸山新町に住むことに於て非凡なることも、又小説家として其の手腕の非凡なることも。

まことや「たけくらべ」の一篇は、たしかに女史が傑作中の一なるべき也。

高山樗牛の他の作品