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TORENDIA

種山ヶ原

本文約8,900字 ・ 読了時間 約18分

あらすじ(AIが作成しました)

北上山地の高原である種山ヶ原で夏休みを過ごす達二は、仔馬の世話や郷土芸能の剣舞を楽しんでいた。ある日、山へ草刈りと牛の放牧に出かけた達二は、急な霧と嵐に巻き込まれ牛を見失ってしまう。深い草の中で幻影を見るなど混乱する中、兄の呼ぶ声で現実を取り戻し、家族が待つ火を焚いた栗の木の根元へと無事に戻る。やがて霧は晴れ、雨上がりの高原に再び陽の光が満ち溢れる様子を描く。

宮沢賢治

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種山ヶ原といふのは北上山地のまん中の高原で、青黒いつるつるの蛇紋岩や、硬い橄欖岩からできてゐます。

高原のへりから、四方に出たいくつかの谷の底には、ほんの五六軒づつの部落があります。

春になると、北上の河谷のあちこちから、沢山の馬が連れて来られて、此の部落の人たちに預けられます。そして、上の野原に放されます。それも八月の末には、みんなめいめいの持主に戻ってしまふのです。なぜなら、九月には、もう原の草が枯れはじめ水霜が下りるのです。

放牧される四月の間も、半分ぐらゐまでは原は霧や雲に鎖されます。実にこの高原の続きこそは、東の海の側からと、西の方からとの風や湿気のお定まりのぶっつかり場所でしたから、雲や雨や雷や霧は、いつでももうすぐ起って来るのでした。それですから、北上川の岸からこの高原の方へ行く旅人は、高原に近づくに従って、だんだんあちこちに雷神の碑を見るやうになります。その旅人と云っても、馬を扱ふ人の外は、薬屋か林務官、化石を探す学生、測量師など、ほんの僅かなものでした。

今年も、もう空に、透き徹った秋の粉が一面散り渡るやうになりました。

雲がちぎれ、風が吹き、夏の休みももう明日だけです。

達二は、明後日から、また自分で作った小さな草鞋をはいて、二つの谷を越えて、学校へ行くのです。

宿題もみんな済ましたし、蟹を捕ることも木炭を焼く遊びも、もうみんな厭きてゐました。達二は、家の前の檜によりかかって、考へました。

(あゝ。此の夏休み中で、一番面白かったのは、おぢいさんと一緒に上の原へ仔馬を連れに行ったのと、もう一つはどうしても剣舞だ。鶏の黒い尾を飾った頭巾をかぶり、あの昔からの赤い陣羽織を着た。それから硬い板を入れた袴をはき、脚絆や草鞋をきりっとむすんで、種山剣舞連と大きく書いた沢山の提灯に囲まれて、みんなと町へ踊りに行ったのだ。ダー、ダー、ダースコ、ダー、ダー。踊ったぞ、踊ったぞ。町のまっ赤な門火の中で、刀をぎらぎらやらかしたんだ。楢夫さんと一緒になった時などは、刀がほんたうにカチカチぶっつかった位だ。

ホウ、そら、やれ、

むかし 達谷の 悪路王、

まっくらぁくらの二里の洞、

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