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TORENDIA

ジャン・クリストフ

本文約6,200字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

ライン河畔のドイツの音楽家の家に生まれたジャン・クリストフは、強烈な感受性とあふれる生命力を持ち、周囲の虚偽に対して反抗を繰り返す。祖国ドイツや亡命先のフランスで腐敗した文明や社会の束縛と対峙し、愛と憎悪、戦いと平和の狭間で自らの信念を貫く。苦闘の生涯を通じて真実と芸術を追い求め、新たな時代の光を見出すまでの魂の飛躍を描いた大河小説である。

序

速度
🎧 ジャン・クリストフ / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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フランス大革命を頂点とする十八世紀より十九世紀への一大転向、隷属的封建制度の瓦解と自由統一的立憲制度の成育とは、新世界をもたらすものと考えられていた。そして実際新世界は開かれた。しかしそこにはさらに本質的な暗雲が深くたちこめていた。その暗雲を払わんがためには、さらに十九世紀より二十世紀への一大転向が必要であった。視界を広げるの努力より、視界を清めるの努力となってきた。外皮を脱するの苦しみより、肉身を洗うの苦しみとなってきた。個性の確立への目覚めより、個性の尊厳への目覚めとなってきた。そしてかかる転向より発したところのものが、外にあっては社会改造の叫びとなり、内にあっては自由解放の叫びとなった。前者を翻訳すれば、吾人に光と空気とを与えよ! であり、後者を翻訳すれば、吾人の魂を解放せしめよ! である。

吾人に光と空気とを与えよ!……社会の最大不公平の一は、実に光と空気との分前のそれである。人類は幾多の世紀を閲するうちに、いつしかピラミッド形に積まれてしまった。そして高きにある者と低きにある者とを問わず、このピラミッドの内部に置かれた者こそ災である。そこにはもはや、永久の暗黒と窒息とがあるのみである。しかも外部に置かれた者すらも、内部より発散する腐爛の気に悩まされざるを得ない。されどもピラミッド全体は、長い間の惰性に引きずられて眠っている。ただ現在に固執している。死体のごときずっしりとした重さで糞落着きに落着いている。萠え出でんとする芽は、その重みの下に押し潰される。人の心は息がつけなくなる。ただ首垂れて、おのれの停滞した存在を見守るのほかはない。生命の力は萎微し、生きんとする意力は鈍ってくる。太陽の光と新鮮なる空気とを希望すること、それさえも忘れられてくる。

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