壇ノ浦の鬼火
本文約7,100字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
赤間ガ関に住む盲目の琵琶法師・法一は、壇ノ浦合戦の語りに長け、その腕前は鬼をも泣かせた。ある夜、法一は謎の武士に招かれ、高貴な人々が集う屋敷で平家の物語を語る。その後も毎夜呼び出されることを危惧した僧侶は、法一の体全体に経文を書き込み、何があっても返事をしてはならないと命じる。その夜、現れた武士は返事をしない法一の両耳を切り落とすが、法一はそれ以降、亡霊から解放され名声を得る。
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一
天下の勢力を一門にあつめて、いばっていた平家も、とうとう源氏のためにほろぼされて、安徳天皇を奉じて、壇ノ浦のもくずときえてからというもの、この壇ノ浦いったいには、いろいろのふしぎなことがおこり、奇怪なものが、あらわれるようになりました。
海岸に、はいまわっているかにで、そのこうらが、いかにもうらみをのんだ無念そうなひとの顔の形をしたものが、ぞろぞろとでるようになりました。これは戦いにやぶれて、海のそこに沈んだ人びとが、残念のあまり、そういうかにに、生まれかわってきたのだろうと、人びとはいいました。それで、これを「平家がに」とよび、いまでも、あのへんへいけば、このかにが、たくさん見られます。
それからまた、月のないくらい夜には、この壇ノ浦の浜辺や海の上に、数しれぬ鬼火、――めろめろとした青い火が音もなくとびまわり、すこし風のある夜は、波の上から、源氏と平家とが戦ったときの、なんともいわれない戦争の物音が聞えてきました。また、そうした夜など、舟でこの海をわたろうとすると、いくつもの黒い影が波の上にうかびあがり、舟のまわりにあつまってきてその舟をしずめようとしました。
土地の人びとは、もう夜になると海をわたることはもちろん、海岸へ出ることさえできなくなりました。しかし、それではこまるというので、みんなよって相談をして、壇ノ浦の近くの赤間ガ関(今の下関)に安徳天皇のみささぎと平家一門の墓をつくりました。それからそのそばに、あみだ寺をたてて、徳の高い坊さんを、そこにすまわせ、朝に夕にお経をあげていただいて、海の底にしずんだ人びとの霊をなぐさめました。
それからというもの、青い鬼火も、戦争の物音も、舟をしずめる黒い影も、あらわれなくなりました。しかしまだときどき、ふしぎなことがおこりました。平家の人びとの霊は、まだじゅうぶんには、なぐさめられなかったとみえます。つぎの物語はこのふしぎなことのひとつであります。
二