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TORENDIA

獨絃哀歌

本文約10,100字 ・ 読了時間 約21分

あらすじ(AIが作成しました)

明治の詩人・蒲原有明が刊行した詩集。雑誌等で発表した自作の詩篇を改刪し、友人による挿画を添えて構成する。内面的な苦悩や孤独、情熱的な愛を綴った数々の詩と、『出雲風土記』の伝承を基にした物語詩、さらに海外の詩人たちの作品の訳詩を収める。自我の揺らぎや生と死の淵に漂う情念を、象徴的な言葉を用いて描き出し、独自の詩的世界を構築する。

蒲原有明

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哀調の譯者に獻ず

例言

一、この小册子に蒐めたる詩稿は曾て「太陽」「明星」其他二三の雜誌に載せて公にしたるものなり、ここに或は數句或は數節改刪して出せり。

一、諸篇中「小鳥」「星眸」等の如きは最も舊く、其他多くは一昨年の秋このかたの作なり。ただ「靈鳥の歌」のみ未だ公にせざりしものこれを最近の作となす。

一、詩形に就ては多少の考慮を費せり、されどこれを以て故らに異を樹てむとするにはあらず。

一、表紙及挿畫は友人山下幽香氏の手を煩したり。

明治卅六年四月著者しるす

獨絃哀歌 (十五首) 附載三首

一

あだならまし

道なき低き林のながきかげに

君さまよひの歌こそなほ響かめ、――

歌ふは胸の火高く燃ゆるがため、

迷ふは世の途倦みて行くによるか。

星影夜天の宿にかがやけども

時劫の激浪刻む柱見えず、

ましてや靡へ起き伏す靈の野のべ

沁み入るさびしさいかで人傳へむ。

君今いのちのかよひ路馳せゆくとき

夕影たちまち動き涙涸れて、

短かき生の泉は盡き去るとも、

はたして何をか誇り知りきとなす。

聖なるめぐみにたよるそれならずば

胸の火歌聲ともにあだならまし。

二

聖菜園

こころの糧をわがとる菜園こそ

榮なき思ひ日毎に耕すなれ。

ある時ひくき緑はここに燃えて

身はまた夢見ごこちにわづらふとも

時には恐怖に沈むかなしき界の

地獄の大風強く吹きすさみて、

ここにぞ生ふる命の葉は皆枯れ、

歡樂冀願もあだに消え去るとも、

ああただかの花草や、(羽なくして

ささやく鳩にも似るか、)そのにほひに

涸れにし泉ふたたび流れ灌ぎ、

ああまた荒れにし土の豐かなる時、

盡きせぬ愛の花草讃めたたへて

聖菜園のつとめに獨りゆかむ。

三

薔薇のおもへる

黄金の朝明こそはおもしろけれ、

狹霧に匂ひてさらばさきぬべきか。

嘆かじ、ひとり立てどもわが爲めいま

おもふに光ぞ照らす、さにあらずや。

嘆かじ、秋にのこりて立ちたれども、

小徑を、(さなり薔薇のこの通ひ路、)

世にまた戀にゆめみるものの二人、――

嗚呼今靜かにさらばさきぬべきか。

少女は清き涙に手さへ顫へ、

をのこは遠きわかれを惜みなげく、

あまりに痛きささやき霜に似たり。

かたみのこれよ花かと摘まれむとき

音なく色に映るもわりなきかな、

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