TRENDIA CLASSIC

日記

宮本百合子

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一月一日 木  夜、一時間。

家中が寝静まった、深い夜の沈黙の中に、此の日記の第一頁を書き始める。私の心の中には、今、殆ど言葉で云い表わせないような感動が漲って居る。総ての者のよき進展の為、総ての者への、豊饒な愛の収穫の為に私は祈を捧げよう。今日、私共を取繞んで居る生活が、常に何事をか欠いたものである事を痛感すればする程、祈願は深大なものに成るのではないだろうか。工藤次也氏が養子に行った先に就ての不幸な経験を話す。一人が一人の不幸を持つ。

一月二日 金 “捲起る旋風”に対する考えが、非常に内心を強く刺戟し始めた。今年は、する仕事をふんだんと云ってもよい程抱いて、何と云うありがたい新年を迎えた事だろう。新らしい生活に入った、新らしいレコードの一頁として、私は非常な緊張と感謝とに満たされずには居ない。然し、グランパ[#夫、荒木茂]と別にして居る一刻が、どんなに苦しいものであるか……。彼も遠い彼方で、よい新年を迎える事をのぞむ。松平氏と、笹川春雄君とが来る。沈黙家の松平君と、世間なれた、自信ある笹川氏との心を思う。岸田劉生氏の絵を、私が、醜に近いものとして或時は見る事に一致して居る。片多徳太郎氏のも……。

人間の自信と云う事を思う。各自の生活と云う事も思う。

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