日記
本文約15,100字 ・ 読了時間 約31分
あらすじ(AIが作成しました)
昭和十一年、二・二六事件直後の出所から始まり、宮本百合子が過ごした病院での療養生活や、見舞いに訪れる家族・友人との交流を綴る。病室の窓から見える庭の風景、読書を通じた思索、音楽会への出席など、日常の細やかな光景や心象が描かれる。後半では、山村での静養中における季節の移ろいや、周囲の出来事を淡々と観察し、詩的な感性で切り取った日々を記録する。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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二月二十六日(水曜) 〔欄外に〕所謂二・二六事件。
三月二十四日(火曜) 予審終結。
証人 山清、塚本周三、西隆、窪川イネ等の由。
三月二十七日(金曜) ○夜七時近くなってから出所。休憩所で荷物をしらべたりする前になって電燈のフューズがとんでしまって待たされる。
○教誨師が来ないで又待ち、来たのを見たら生白いひょこすかな若い者で、黒い服に白足袋、草履、ふところでをしてまるでぞめきのような歩きつきをした男。どうぞ気をつけてやって下さい云々。一旦林町へかえるつもりのところ、真直慶応へ来る約束をしたとのことでこっちへ来てしまった。スエ子大よろこび。部屋をキレイにして待っていてくれる。夜喋って一寸も眠れず。自分眠れぬ条件は持っていないと思っていたがやはり眠れなかった。まだ戒厳中とはびっくり。いろいろ大事をとって出した理由の一半が理解された。
〔欄外に〕国、咲、栄、ベンゴ士、ロクロー[#倉知緑郎]
三月二十八日(土曜) 咲枝たち国府津へ行った由。
○新妻伊都子よりお使。
○この病室、南向。窓から土、大きい梅の木、エゾ松等見えて、久しぶりに心持よし。但、省電の音がやかましい、ひどくやかましい。父上もこっち側の二階であった由。
スエ子出かけて椅子とテーブルを買って来て呉れる。
テーブル低し、栄さんにあしをたのむ。
〔欄外に〕夜クスリをもらって眠る。
三月二十九日(日曜) 良。
〔欄外に〕夜薬をもらって眠った。
三月三十日(月曜) ひどい風。
三月三十一日(火曜) 夕方からクニ、ロクが来て皆で青山のお墓りをした。門の棒杭が左方とれて、扉もなし。花もなし。五十日祭をしたから花はないのだということ。スエ子、顔つきをかえて、花を自分で買って来た。いろいろ心持がサクザツしていることが、こういう一つのことを見ても感じられる。クニ、夕飯を病院でたべてゆく。いろいろの用事をたのむ。
スエ子、小猫のように私のまわりを廻って本も読ませぬ。
小山、関。関さん、私がもう死ぬかと思った顔つきで入って来た。
徳。