母と娘
本文約9,800字 ・ 読了時間 約20分
あらすじ(AIが作成しました)
ロンドン郊外で暮らす未亡人スルイヤと、その娘アグネスは親友のような母娘として穏やかに暮らしていた。大戦で夫を亡くしたスルイヤは平和を願うが、成長したアグネスは陸軍飛行場での操縦訓練に強い関心を抱く。国際的なハイキング・クラブを通じフランスやドイツを旅行するアグネスは、旅先で各国の軍事的な緊張や戦争の惨禍を目の当たりにし、母親の心境を知る。平和への願いと軍事的現実の狭間で揺れ動く母娘の葛藤を描く。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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ロンドンの北郊ハムステット丘の公園の中に小綺麗な別荘風の家が立ち並んで居る。それ等の家の内で No.1 の奥さんはスルイヤと言って赤毛で赭ら顔で、小肥りの勝気な女。彼女に二年前に女学校を卒業したアグネスと言う十九歳の一人娘がある。アグネスは丈が高く胸が張って体全体に男の子のような感じがあるが、でも笑う時は笑くぼや眼の輝やきや、優しい歯並らびが露れて本当に可愛いい少女の容貌になる。
此の母娘は評判の仲良しで近所の人達は彼女等が姉妹か親友のようだと言う程、何事をも共同でやっていた。中古のガタガタ自動車を安く買い求めて、車庫が無いので前庭の草花の咲いて居る芝生へ乱暴に押し入れて合羽をかけて置く。郊外へ出かける折りなど蓄音器を積み込んで交代に操縦して行った。以前は家に鍵をかけ二三日留守にして汽車や徒歩で天幕や食料を分担して勇ましく母娘の小旅行に出かけたのであった。
スルイヤの夫は工業学校出の機械屋であったが、あの全欧洲の男性を人殺し機械にした欧洲大戦の際、英国陸軍工兵中尉として、生れた許りのアグネスに頬ずりして、白耳義の戦線へ出征して行った。而して間も無く戦死を遂げたのであった。其の後の母娘は遺族恩給で余り贅沢は出来ぬが普通な生活を続けて来た。