街頭
本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
パリの百貨店ギャラレ・ラファイエットの飾窓に、機械人形の「エッフェル塔見物」を見ようと人々が行列を作る。機械仕掛けによる人間離れした動作のリズムに群集は引き込まれ、見終わった後も人形のような動きを無意識に繰り返す。感情や経済の論理で動く日常に飽いた人々が、街の喧騒の中で奇妙な動作の観賞に浸る姿を描き、夜のパリが再び彼らを日常へと呑み込んでいく様子を鮮烈に描写する。
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二列に並んで百貨店ギャラレ・ラファイエットのある町の一席を群集は取巻いた。中には雨傘の用意までして来た郊外の人もある。人形が人間らしく動く飾物を見ようとするのだ。
百貨店の大きな出庇の亀甲形の裏から金色の光線が頸の骨を叩き付けるほど浴せかける。右から左から赤や水色の紫外光線が足元を掬う。ここでは物は曖昧でいる事は許されない。明るみへ出て影をぎとられるか闇に骨まで呑み込まれてしまうかだ。
行列の前の方で鬘で年を隠したマダムが逃げた若い情夫と思わずめぐり合った。金棕櫚織の襟飾に手がかかる。
――まあ、この薄情が! ちょっとお出で。
鋪石へ連れ出す。
気の利いたタキシーがすぐ側へ乗りつけて来て無言で扉をあける。後れ走せに馳けつけた巴里の巡査が二人を軽く押し込んで扉を締める。
――行先きは二人でよく相談しなさい。
そしてわざと丁寧な挙手をした。
二人の抜けたあとの行列の空所は直ぐうずまった。
基督降誕祭にはあと四五日の土曜の夜だ。高いオペラの空気窓から「タイスの」唄が炭酸瓦斯にまみれて浮き出ている。遅々たる行列の進みが百貨店の外の入口まで届くと黒服の店員に管理されて人数の一くぎりずつが内側の入口の床石に誘われる。ここは三面飾窓で囲まれて兎の口のようになっている。飾窓の二面は普通の新衣裳の飾人形だが、残った一つの入口に向って右の飾窓のがみんなの目あての「エッフェル塔見物」の機械人形だ。
英吉利の田舎おやじらしい、塔の欄干から外へ墜ちかけた。若者がズボン釣を捉えた。おやじは甲蟲のようにく。下はセーヌを目尺にして巴里の鳥瞰図が展開する。群集の興味はズボン釣一つに繋る。
おやじの妻は驚いて卒倒しかけている。その顔は菠薐の葉の緑だ。昇降機の中に六人の男女がいる。機械仕掛のことだから六人が六人とも同じ時間を置いて同じ程度の驚きを見せる。