TRENDIA CLASSIC
東の渚
伊藤野枝
1 / 1
東の磯の離れ岩、
その褐色の岩の背に、
今日もとまつたケエツブロウよ、
何故にお前はそのやうに
かなしい声してお泣きやる。
お前のつれは何処へ去た
お前の寝床はどこにある――
もう日が暮れるよ――御覧、
あの――あの沖のうすもやを、
何時までお前は其処にゐる。
岩と岩との間の瀬戸の、
あの渦をまく恐ろしい、
その海の面をケエツブロウよ、
いつまでお前はながめてる
あれ――あのたよりなげな泣き声――
海の声まであのやうに
はやくかへれとしかつてゐるに
何時まで其処にゐやる気か
何がかなしいケエツブロウよ、
もう日が暮れる――あれ波が――
私の可愛いゝケエツブロウよ、
お前が去らぬで私もゆかぬ
お前の心は私の心
私も矢張り泣いてゐる、
お前と一しよに此処にゐる。
ねえケエツブロウやいつその事に
死んでおしまひ!その岩の上で――
お前が死ねば私も死ぬよ
どうせ死ぬならケエツブロウよ
かなしお前とあの渦巻へ――
――東の磯の渚にて、一〇、三、――
*ケエツブロウ=海鳥の名。(方言ならん)
[『青鞜』第二巻第一一号・一九一二年一一月号]
伊藤野枝の他の作品
TRENDIA CLASSIC
消息
伊藤野枝
消息
伊藤野枝 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
読者諸氏に
伊藤野枝
読者諸氏に
伊藤野枝 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
夫婦喧嘩の功過
と責任の所在(
アンケート回答
)
伊藤野枝
夫婦喧嘩の功過と責任の所在(アンケート回答)
伊藤野枝 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
編輯室より(一
九一五年五月号
)
伊藤野枝
編輯室より(一九一五年五月号)
伊藤野枝 ・ 約5分
TRENDIA CLASSIC
編輯室より(一
九一五年七月号
)
伊藤野枝
編輯室より(一九一五年七月号)
伊藤野枝 ・ 約3分
TRENDIA CLASSIC
編輯室より(一
九一五年四月号
)
伊藤野枝
編輯室より(一九一五年四月号)
伊藤野枝 ・ 約4分
TRENDIA CLASSIC
編輯室より(一
九一五年一月号
)
伊藤野枝
編輯室より(一九一五年一月号)
伊藤野枝 ・ 約4分
TRENDIA CLASSIC
編輯室より(一
九一五年三月号
)
伊藤野枝
編輯室より(一九一五年三月号)
伊藤野枝 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
編輯室より(一
九一五年二月号
)
伊藤野枝
編輯室より(一九一五年二月号)
伊藤野枝 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
編輯室より(一
九一五年六月号
)
伊藤野枝
編輯室より(一九一五年六月号)
伊藤野枝 ・ 約6分
TRENDIA CLASSIC
編輯室より(一
九一三年七月号
)
伊藤野枝
編輯室より(一九一三年七月号)
伊藤野枝 ・ 約3分
TRENDIA CLASSIC
編輯室より(一
九一四年一一月
号)
伊藤野枝
編輯室より(一九一四年一一月号)
伊藤野枝 ・ 約4分