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TORENDIA

J・D・カーの密室犯罪の研究

本文約5,400字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

ジョン・ディクソン・カーの長編『三つの棺』に登場するフエル博士が、探偵小説における密室犯罪の不可解さを解明するため、その手口を体系的に分類し解説する。作品中盤に講義の形式で挿入されるこの一章は、密室のトリックを物理的な機械装置や錯覚、さらには犯行後の密室偽造といった多様な手法に整理して提示する。探偵小説が持つ尤もらしさを超えた魅力の本質を問いながら、数々の先例を引用し、謎の構造を研究的視点から掘り下げる。

井上良夫

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🎧 J・D・カーの密室犯罪の研究 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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アメリカの青年作家ジョン・ディクソン・カーは、彼の新しい力作『三つの棺』の中で、特に一章を設け、作中の主要人物フエル博士の講義の体にして、探偵小説に扱われた密室犯罪の様々を分類発表してみせてくれている。読んでいても如何にも小気味よい態度であるが、同作品を貫く眼目が密室犯罪の解決に全然新しい思い付きを見せようと意気込んだもので、作者が若いだけに途中興味が折々緩み勝ちになることはあるが、実際そこで投げ出される不可解さの魅力は素晴らしく、最後の解決を見ずに放棄するというようなことは、私の場合では先ず不可能のように思われた。

作者の密室犯罪の講義というのは、愈々事件が解決へのあわただしさを持ち始めて来た三分の二あたりの所でおもむろに挿入された一章である。

ヴァン・ダインの『グリーン・マーダー・ケース』終り近くに羅列される重要ファクターの箇条書から受ける感じと一寸似ているが、挑戦の面白味も一と際増して来るのと、読者の側になんとなく落着いた気分が与えられて来るのとでその挿入が甚だ時宜を得ており、非常に効果的であると思って感心した。しかしこの一章は、もともと研究的色彩に富んでいるもので、そういう切迫した雰囲気とは全然切り離し、独立的に取出して来てみても充分に読み応えはあろうと思われる。それで以下、適宜抄訳意訳に簡単な註釈も加え御紹介しておきたい。

まずフエル博士は、作者カーに代って次のように語り出す。

「一部の人々は、自分達が怪奇的色彩を帯びた作品を好まないものだから、そうした自己の好みを以ってすべてを律しようとし、気に入らぬ作品はきまって、こんな話は実際にありそうにもない、といって非難する。ひいては、この人々は他の人々にも、実際にはありそうにもない、ということはつまり感心出来ない探偵小説を意味するのだと、考えさせるようにしてしまう。けれども、探偵小説を貶すのに、ありそうにない、尤もらしくないなどという言葉を使うのは、とりわけ当を得ていないのではあるまいか。私達が探偵小説を愛好するのは、外でもない、その『尤もらしくないこと』が好きだからなのだ」

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