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TORENDIA

ジャム、君の家は

本文約980字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

ピレネェ山中のオルテエズの村で、母と二人で静かに暮らす若き詩人フランシス・ジャムの生活を綴る。処女詩集の出版を控えた時期、親交のあったシャルル・ゲランがこの田園の家を訪れる。蔦が絡まり平屋づくりのつつましい家と、草花や小鳥に囲まれた自然豊かな環境、そして隠棲生活を送る詩人の誠実な眼差しが、ゲランの贈った詩の断片を通して浮かび上がる。本書は、友の家で過ごした記憶と、そこにある静謐な時間の調和を瑞々しく描き出す。

シャルル・ゲラン Charles Guerin

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🎧 ジャム、君の家は / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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「マルテの手記」の一節に、巴里の陋巷で苦惱に充ちた生活をしてゐる孤獨なマルテが、或日圖書館で讀んだ一人の田園詩人――山のなかの靜かな古い家で、花や小鳥や書物などを相手にして暮らしてゐられるその幸福な詩人のことをひそかに羨望するところがある。その一節は讀者に忘れがたい印象を殘すが、その田園詩人はフランシス・ジャムだと云ふことになつてゐる。

この頃ジャムの囘想記をひもといてゐたら、第三卷のはじめのところに、ピレネェ山中の、もうスペインとの國境にも近いオルテエズの村で、まだ若い詩人が母とただ二人きりで靜かに暮らすことになつた新居の模樣が愉しげに敍せられてある。處女詩集「曉のアンジェラスから夕のアンジェラスまで」をこれから世に問はうとしてゐた頃(一九九八年[#「一九九八年」はママ])のことで、その家への最初の客として、詩人シャルル・ゲランがはるばる訪ねて來る。そして一緒に棕櫚の日曜日を過ごす。そのをりシャルル・ゲランがジャムに與へた詩の斷片は、その隱棲をわれわれの目にも浮ぶやうに蘇らせてくれる……

おお、ジャム、君の家は君の顏にそつくりだね。

蔦の鬚がからんで、松の木がそれを覆うてゐる。

風や冬の寒さにも、また悲しみにもめげず、

君の心のやうにいつまでも元氣で若々しく。

君の中庭の低い塀はすつかり苔がむし、

住居はつつましい平屋づくりで、草は生え放題、

庭のなかの井戸や月桂樹のまはりに茂つてゐる。

君の門の戸が死にかけた小鳥のやうに叫ぶのをきくと、

おだやかな感動が私の心をぼおつとさせてしまふ。

私はずゐぶん長いこと君を訪れなかつた、ジャム、

だが、君は私が心に描いてゐたとほりの君だつた。

私は見た、君の犬が徑ばたにぐつたりと寢そべつてゐるのを、

さうして鵲のやうな黒と白との帽子の下から、

君の率直な眼がもの憂げに私に微笑みかけてゐるのを。

君の窓は考へ深さうに地平線の方へうち展いてゐる、

壁には君のパイプがかかり、さうして書棚の硝子には、

詩人らの書物に田畑がそつくり映つてゐる。

……………………………………………………

ジャム、君の窓に凭れてゐると、一目で見える、

ヴィラだの、田畑だの、地平線だの、山の雪だのが。

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