TRENDIA CLASSIC
紅玉
泉鏡花
1 / 12
時―――現代、初冬。 場所――府下郊外の原野。 人物――画工。侍女(烏の仮装したる)。貴夫人。老紳士。少紳士。小児五人。――別に、三羽の烏(侍女と同じ扮装)。
小児一 やあ、停車場の方の、遠くの方から、あんなものが遣つて来たぜ。 小児二 何だい/\。 小児三 あゝ、大なものを背負つて、蹌踉々々来るねえ。 小児四 影法師まで、ぶら/\して居るよ。 小児五 重いんだらうか。 小児一 何だ、引越かなあ。 小児二 構ふもんか、何だつて。 小児三 御覧よ、脊よりか高い、障子見たやうなものを背負つてるから、凧が歩行いて来るやうだ。 小児四 糸をつけて揚げる真似エして遣らう。 小児五 遣れ/\、おもしろい。 凧を持つたのは凧を上げ、独楽を持ちたるは独楽を廻す。手にものなき一人、一方に向ひ、凧の糸を手繰る真似して笑ふ。
画工 (枠張のまゝ、絹地の画を、やけに紐からげにして、薄汚れたる背広の背に負ひ、初冬、枯野の夕日影にて、あか/\と且つ寂しき顔。酔へる足どりにて登場)……落第々々、大落第。(ぶらつく体を杖に突掛くる状、疲切つたる樵夫の如し。しばらくして、叫ぶ)畜生、状を見やがれ。 声に驚き、且つ活ける玩具の、手許に近づきたるを見て、糸を手繰りたる小児、衝と開いて素知らぬ顔す。
画工、其の事には心付かず、立停まりて嬉戯する小児等をす。
よく遊んでるな、あゝ、羨しい。何うだ。皆、面白いか。
小児等、彼の様子を見て忍笑す。中に、糸を手繰りたる一人。
泉鏡花の他の作品
TRENDIA CLASSIC
作物の用意
泉鏡花
作物の用意
泉鏡花 ・ 約4分
TRENDIA CLASSIC
小説に用ふる天
然
泉鏡花
小説に用ふる天然
泉鏡花 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
小説文体
泉鏡花
小説文体
泉鏡花 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
芥川竜之介氏を
弔ふ
泉鏡花
芥川竜之介氏を弔ふ
泉鏡花
TRENDIA CLASSIC
愛と婚姻
泉鏡花
愛と婚姻
泉鏡花
TRENDIA CLASSIC
悪獣篇
泉鏡花
悪獣篇
泉鏡花
TRENDIA CLASSIC
紫陽花
泉鏡花
紫陽花
泉鏡花
TRENDIA CLASSIC
霰ふる
泉鏡花
霰ふる
泉鏡花
TRENDIA CLASSIC
雨ばけ
泉鏡花
雨ばけ
泉鏡花
TRENDIA CLASSIC
遺稿
泉鏡花
遺稿
泉鏡花
TRENDIA CLASSIC
遺稿
泉鏡花
遺稿
泉鏡花
TRENDIA CLASSIC
一景話題
泉鏡花
一景話題
泉鏡花