本文へ移動
TORENDIA

「ああしんど」

本文約650字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

泉州堺からやって来た三毛猫の「三」は、十八年もの間、祖父の家で暮らし、すっかり年老いていた。ある冬の寒い日、炬燵の上で丸くなっていた猫は、背伸びをして突然「ああしんど」と言葉を発する。その出来事に驚いた曾祖母は化け猫を疑い、幾度となく外へ捨てようと試みる。猫は決して家を離れようとせず、祖父は成長した後も、猫が言葉を話すという幼い頃の記憶から、猫に対して深い恐怖心を抱き続ける。

池田蕉園

速度
🎧 「ああしんど」 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

よっぽど古いお話なんで御座いますよ。私の祖父の子供の時分に居りました、「三」という猫なんで御座います。三毛だったんで御座いますって。

何でも、あの、その祖父の話に、おばあさんがお嫁に来る時に――祖父のお母さんなんで御座いましょうねえ――泉州堺から連れて来た猫なんで御座いますって。

随分永く――家に十八年も居たんで御座いますよ。大きくなっておりましたそうです。もう、耳なんか、厚ぼったく、五分ぐらいになっていたそうで御座いますよ。もう年を老ってしまっておりましたから、まるで御隠居様のようになっていたんで御座いましょうね。

冬、炬燵の上にまあるくなって、寐ていたんで御座いますって。

そして、伸をしまして、にゅっと高くなって、

「ああしんど」と言ったんだそうで御座いますよ。

屹度、曾祖母さんは、炬燵へ煖って、眼鏡を懸けて、本でも見ていたんで御座いましょうね。

で、吃驚致しまして、この猫は屹度化けると思ったんです。それから、捨てようと思いましたけれども、幾ら捨てても帰って来るんで御座いますって。でも大人しくて、何にも悪い事はあるんじゃありませんけれども、私の祖父は、「口を利くから、怖くって怖くって、仕方がなかった。」って言っておりましたよ。

祖父は私共の知っておりました時分でも、猫は大嫌いなんで御座います。私共が所好で飼っておりましても、

「猫は化けるからな」と言ってるんで御座います。

で、祖父は、猫をあんまり可愛がっちゃ、可けない可けないって言っておりましたけれど、その後の猫は化けるまで居た事は御座いません。

完

同じジャンルの朗読つきの本