尾瀬沼の四季
本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
尾瀬沼の四季折々の自然美を綴る。冬の酷寒や雪に閉ざされた神秘的な景観から、春の訪れとともに躍動する植物、夏から秋にかけての色鮮やかな草花と紅葉の情景を描く。また、自然保護の重要性を説き、登山者に植物採取を戒める一方で、学生村の創設や林道開拓を通じて、俗化を避けつつこの自然の神苑を有意義に活用・保存しようとする山人としての思想と、直面する苦闘や葛藤を率直に記す。
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尾瀬沼は海抜五千四百九拾尺、福島県と群馬県とにわたり、東は栃木県に峰を連ね、北西は新潟県及利根水源に接している。今日もなお三十年前と同じく少しも俗化せず、真に自然の仙境である。
冬季は降雪甚しく、眼前咫尺を弁せず、日光を見ざること五日以上に至ることも珍しからず、従って寒気甚しく、寒暖計は水銀柱が萎縮して下部のガラス球の中にその姿を没してしまうという有様である。針葉樹にありては積雪二尺以上に及び、枝も幹も見えず、闊葉樹でも樹枝に一尺からの雪が積る。一度烈風が襲来すると、雪は吹き捲られて煙の如く渦を巻いて昇騰し、面を向くべき方もなく、ただその猛威に慴伏するばかりである。それが晴天の日となれば、連山の針葉樹を包む白雪は日光に輝いて、美観壮観譬うるに言葉もない。それこそ実に都人士に見せたいものであるが、一人として登山する者のないのは遺憾である。学生が冬の中にスキー登山を試みんとして問合す向きもあれど実行した様子もない。真に剛健質実の気象を養成し、自然の霊気を感得せんと欲する人は途中救助小屋の建設と防寒具の用意もあれば、準備に注意し、何日帰京などと期日は定めずして登山してもらいたい、万一天候険悪の時には数日滞在することもあるにより、家族の人に不安の念を起さしめざるように注意するを肝要とする。