よく利く薬とえらい薬
本文約3,800字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
森のあき地で、病気の母のために不思議なばらの実を集める少年・清夫の物語。清夫が手にした実を母が飲むと、病はたちまち快癒する。その噂を聞きつけた町の金持ち・大三は、自らも健康を得ようと森へ入り、強引に実を探し回る。見つからない実を自ら製造しようと、無理な化学反応を試みた大三は、誤って猛毒を生成してしまう。本作は、強欲な男が道を踏み外す姿と、素直な心を持つ者だけが授かる恵みを描く。
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清夫は今日も、森の中のあき地にばらの実をとりに行きました。
そして一足冷たい森の中にはひりますと、つぐみがすぐ飛んで来て言ひました。
「清夫さん。今日もお薬取りですか。
お母さんは どうですか。
ばらの実は まだありますか。」
清夫は笑って、
「いや、つぐみ、お早う。」と言ひながら其処を通りました。
其の声を聞いて、ふくろふが木の洞の中で太い声で言ひました。
「清夫どの、今日も薬をお集めか。
お母は すこしはいゝか。
ばらの実は まだ無くならないか。
ゴギノゴギオホン、
今日も薬をお集めか。
お母は すこしはいゝか。
ばらの実は まだ無くならないか。」
清夫は笑って、
「いや、ふくろふ、お早う。」と言ひながら其処を通りすぎました。
森の中の小さな水溜りの葦の中で、さっきから一生けん命歌ってゐたよし切りが、あわてて早口に云ひました。
「清夫さん清夫さん、
お薬、お薬お薬、取りですかい?
清夫さん清夫さん、
お母さん、お母さん、お母さんはどうですかい?
清夫さん清夫さん、
ばらの実ばらの実、ばらの実はまだありますかい?」
清夫は笑って、
「いや、よしきり、お早う。」と云ひながら其処を通り過ぎました。
そしてもう森の中の明地に来ました。
そこは小さな円い緑の草原で、まっ黒なかやの木や唐檜に囲まれ、その木の脚もとには野ばらが一杯に茂って、丁度草原にへりを取ったやうになってゐます。
清夫はお日さまで紫色に焦げたばらの実をポツンポツンと取りはじめました。空では雲が旗のやうに光って流れたり、白い孔雀の尾のやうな模様を作ってかゞやいたりしてゐました。
清夫はお母さんのことばかり考へながら、汗をポタポタ落して、一生けん命実をあつめましたがどう云ふ訳かその日はいつまで経っても籠の底がかくれませんでした。そのうちにもうお日さまは、空のまん中までおいでになって、林はツーンツーンと鳴り出しました。
(木の水を吸ひあげる音だ)と清夫はおもひました。
それでもまだ籠の底はかくれませんでした。
かけすが、
「清夫さんもうおひるです。弁当おあがりなさい。落しますよ。そら。」と云ひながら青いどんぐりを一粒ぽたっと落して行きました。