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TORENDIA

大切な雰囲気

本文約1,300字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

小出楢重の晩年を中心に綴られた随筆集である。本書は「国産玩具の自動車」や「挿絵の雑談」など、昭和二年からの数年間に執筆された論考を収める。随筆全体には、著者の鋭い神経と感受性が反映されており、ユーモアと警句を交えながら絵画や近代洋画の傾向、風景、都市生活を語る。古い伝統への憧憬と機械美を好む尖端的な視点が交錯し、自身の体質や感性に基づいた日常の観察を飾り気のない言葉で描いている。

石井柏亭

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🎧 大切な雰囲気 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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鬼才小出楢重が逝いてから早くも五年になろうとする。そうして今ここに彼の随筆集『大切な雰囲気』が刊行されることになった。これには『めでたき風景』に漏れた、昭和二年から四年へかけての二三篇「国産玩具の自動車」「挿絵の雑談」「二科会随想」等も含まれはするが、其大部分は其最も晩年なる五年中に書かれたものである。

体質の弱い彼は一年の間に画作に適する時季を極めて僅かしか持たなかったと毎々言って居たが、随筆には時季を選ばなかったのであろうか。五年には相当の分量を書いて居る。

小出の随筆にはユーモアと警句とが頻出する。例えば大久保作次郎君の印象を書いた短文のなかに、「君子は危きに近よらずとか申しますが、危きに内心ひそかに近よりたがる君子で、危い所には何があるかもよく御存じの君子の様な気もします。とに角ものわかりのよい、親切、丁寧、女性に対してものやさしきいい君子かも知れません」と云う如きは、随分大久保君の痛い所を突いて居るにも拘わらず、其言葉のもつユーモアの為めに人を怒らしめぬ徳がある。素人のする漫談を痛罵して「結び目なき話の尻は走ったままの電車であり、幕の閉まりそこねた芝居でもある」と云い、日本の近代洋画を談じては「どうやら手数を省いて急激に人の眼と神経をなぐりつけようとする傾向の画風と手法が発達しつつあり」と云い、立秋奈良風景を描いては猿沢池から春日へ爪先あがりのかんかん照りの坂道を「丁度張物板を西日に向って立てかけてあるのと同じ角度に於て太陽に向って居る」と云い、又尖端的な世界にあっては清潔第一、垢が禁物であることを論じては「それは手術室の如く埃と黴菌を絶滅し、エナメルを塗り立てて、渋味、雅味、垢、古色、仙骨をアルコオルで洗い清め、常に鋭く光沢を保たしめねばならない。断髪の女性にして二三日風邪で寝込むとその襟足の毛が二三分延びてくる。すると尼さんの持つ不吉なる雅味を生じてくる」と述ぶるが如き、みな彼独特のユーモアと警句とでないものはない。

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