TORENDIA
松園女史の思い
出
金子薫園
TORENDIA
松園女史の思い出
本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
荻窪の自宅で春の気配を感じる著者が、大正二年の京都で上村松園と初めて面会した際の追憶を綴る。御池通にある邸宅を訪ねた著者は、気品ある女史の佇まいと真摯な応対に感銘を受ける。対話の中で蓮月尼への想いを語り合い、やがて女史の芸術や人生に対するひたむきな姿勢を知る。芸術家の高潔な香気と、当時の京都の穏やかな情景を重ね合わせ、過ぎ去った日の記憶を丁寧に描き出す。
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🎧 松園女史の思い出 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん
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窓の外で春の形見の鶯が頻りに啼いている。
荻窪の家に住んでいた頃のこと、嫁いだ娘ののこした部屋を第二の書斎にしている私は、今、朝の窓の日ざしに向っている。ふと蓮月尼の「おり立ちて若葉あらへば加茂川の岸のやなぎに鶯のなく」の情景を頭の中で描きながら、三十年前に会った京の松園女史の面影を眼に浮べている。
それは大正二年四、五月の交である。私は京都に遊んで、ひらぎ屋に泊って洛中洛外を巡覧した。御池通の松園女史を訪ねて女史に初めて逢ったのは、この時であった。私の来訪を快く迎えてくれた女史はそのころ三十を幾つも出ない、美しい女ざかりであった。女史の画中の化政時代の麗人がそこへ浮び出たかと思われるたおやかさであった。言葉ずくなに語る一言一句は私の身にも心にもしみ透るような感銘を受けた。その時私は、
初夏のお池の南清らなる冷たき水のごとき
君住む