最初の苦悩
本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
サーカスの空中ブランコ乗りは、芸の完璧な維持のために昼夜を問わず舞台の円天井にあるブランコ上で生活を送る。興行主は彼の類まれな才能を認め、移動の際も細心の配慮を尽くしてその生活を支えていた。しかし、ある時二人が旅に出る中で、ブランコ乗りは突然二つのブランコを使用したいと切実に訴え、一本の綱で演技を続けることへの苦悶を吐露する。彼は懸命になだめられるが、その心には拭い去れない不安の影が差し始める。
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ある空中ブランコ乗りは――よく知られているように、大きなサーカス舞台の円天井の上高くで行われるこの曲芸は、およそ人間のなしうるあらゆる芸当のうちでもっともむずかしいものの一つであるが――、はじめはただ自分の芸を完全にしようという努力からだったが、のちにはまた横暴なほどになってしまった習慣から、自分の生活をつぎのようにつくりあげてしまった。つまり、一つの興行で働いているあいだは、昼も夜もブランコの上にとどまっているのだ。食事や大小便といったものはすべて(とはいってもそういうものはきわめて少なかったものだが)、下で見張っている交代の小使たちの手で面倒が見られ、上で必要とされるものはすべて特別につくられた容器で上げ下ろしされるのだった。こうした生きかたからはまわりの生活にとってとくに困難なことは起こらなかった。ただ、ほかの番組が行われるあいだは、彼が姿を隠すことができないので上にとどまっているということ、またこうしたときにはたいていはおとなしくしているにもかかわらず、ときどき観客の視線が上にいる彼のほうにそれていくということが、ほんのちょっとばかり妨げとなった。しかし、サーカスの幹部はこのことを許していた。なぜならば、彼は平凡でない、かけがえのない曲芸師であったからだ。また彼らはもちろん、彼がわがままからこんなふうな生活をやっているのではなく、ほんとうはただそうやってたえず練習をやっているのであり、ただそうやってこそ彼の芸を完璧に維持することができるのだ、ということをよく知っていた。