断食芸人
本文約11,000字 ・ 読了時間 約22分
あらすじ(AIが作成しました)
断食芸人の興行はかつて町を熱狂させたが、時代とともに人々の関心は薄れていく。芸人は見張りの監視下で禁欲を貫くが、世間は彼をインチキ師と疑い、理解を得られない孤独に苦しむ。彼にとって断食は、好みの食べ物を見つけられなかったがゆえの、避けられない生業にすぎなかった。ある日、見捨てられた檻の中から衰弱した彼が発見される。断食の末、彼が取り除かれた檻には、生きる喜びに満ちた若い豹が入れられ、人々はその活力に魅了される。
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この何十年かのあいだに、断食芸人たちに対する関心はひどく下落してしまった。以前には一本立てでこの種の大きな興行を催すことがいいもうけになったのだが、今ではそんなことは不可能だ。あのころは時代がちがっていたのだ。あのころには町全体が断食芸人に夢中になった。断食日から断食日へと見物人の数は増えていった。だれもが少なくとも日に一度は断食芸人を見ようとした。興行の終りごろには予約の見物人たちがいて、何日ものあいだ小さな格子檻の前に坐りつづけていた。夜間にも観覧が行われ、効果を高めるためにたいまつの光で照らされた。晴れた日には檻が戸外へ運び出される。すると、断食芸人を見せる相手はとくに子供たちだった。大人たちにとってはしばしばなぐさみにすぎず[#「なぐさみにすぎず」は底本では「なぐさみにすぎす」]、ただ流行だというので見るだけだが、子供たちはびっくりして口を開けたまま、安全のためにたがいに手を取り合って断食芸人の様子をながめるのだった。断食芸人は、顔蒼ざめ、黒のトリコット製のタイツをはき、あばら骨がひどく出ており、椅子さえはねつけて、まき散らしたわらの上に坐り、一度ていねいにうなずいてから無理に微笑をつくって観客の質問に答え、また格子を通して腕をさし出し、自分のやせ加減を観客にさわらせ、やがてふたたびすっかりもの思いにふけるような恰好となり、もうだれのことも気にかけず、檻のなかのただ一つの家具である時計の、彼にとってきわめて大切な時を打つ音もまったく気にかけず、ただほとんど閉じた両眼で前をぼんやり見つめ、唇をぬらすためにときどき小さなコップから水をすするのだった。