活人形
本文約40,800字 ・ 読了時間 約82分
あらすじ(AIが作成しました)
探偵の倉瀬泰助は、本郷病院で毒に中り瀕死の状態にあった本間次三郎から、鎌倉の赤城家で行われている冷酷な後見人による虐待と遺産強奪の真相を聞き出す。泰助は鎌倉へ向かい、赤城家の屋敷に潜入して監禁された姉妹の救出を企てる。得右衛門と協力して奇計を弄し、悪辣な後見人との対決に挑む泰助の活躍と、人形が佇む薄気味悪い館で繰り広げられる緊迫した救出劇を描く。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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急病 系図 一寸手懸 宵にちらり 妖怪沙汰 乱れ髪 籠の囮 幻影 破廂 夫婦喧嘩 みるめ、かぐはな 無理 強迫 走馬燈 血の痕 火に入る虫 呀! 同士討 虐殺 二重の壁 赤城様――得三様 旭
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一 急病
雲の峰は崩れて遠山の麓に靄薄く、見ゆる限りの野も山も海も夕陽の茜に染みて、遠近の森の梢に並ぶ夥多寺院の甍は眩く輝きぬ。処は相州東鎌倉雪の下村……番地の家は、昔何某とかやいえりし大名邸の旧跡なるを、今は赤城得三が住家とせり。
門札を見て、「フム此家だな。と門前に佇みたるは、倉瀬泰助という当時屈指の探偵なり。色白く眼清しく、左の頬に三日月形の古創あり。こは去年の春有名なる大捕物をせし折、鋭き小刀にて傷けられし名残なり。探偵の身にしては、賞牌ともいいつべき名誉の創痕なれど、衆に知らるる目標となりて、職務上不便を感ずること尠からざる由を喞てども、巧なる化粧にて塗抹すを常とせり。
倉瀬は鋭き眼にて、ずらりとこの家を見廻し、「ははあ、これは大分古い建物だ。まるで画に描いた相馬の古御所というやつだ。なるほど不思議がありそうだ。今に見ろ、一番正体を現してやるから。と何やら意味ありげに眩きけり。
さて泰助が東京よりこの鎌倉に来りたるは、左のごとき仔細のありてなり。
今朝東京なる本郷病院へ、呼吸も絶々に駈込みて、玄関に着くとそのまま、打倒れて絶息したる男あり。年は二十二三にして、扮装は好からず、容貌いたく憔れたり。検死の医師の診察せるに、こは全く病気のために死したるにあらで、何にかあるらん劇しき毒に中りたるなりとありけるにぞ、棄置き難しと警官がとりあえず招寄せたる探偵はこの泰助なり。