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TORENDIA

雪解水

本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

信州伊那を訪れた筆者は、雪解け水で白く濁る天龍川の雄大な流れを眺め、その光景から春の気配と自然の力を感受する。本書は、川の風情や折に触れて抱く人生観を綴るとともに、平福百穂が歌や画に込めた大自然への畏敬の念と、彼が生涯を通じて抱き続けた洪水を主題とする絵画制作への情熱を論じる。また、雪解け水にまつわる古今の歌人による傑作を引き、自然の力強さと、それに感応する人間の創造性について考察を深めていく。

今井邦子

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🎧 雪解水 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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何をくよくよ川ばた柳、水の流れを見てくらす

此俗謠は誰の作で、いつの頃から市井の唄となつて流行しだしたかはまだ調べてみないが、よほどの苦勞人の作であらう。ここで歌はれてゐる水の流れといふのは人生の象徴にもなつてゐるので、そこで一種洒脱の人生觀をもうたひ得てゐるのであらう。

水の流れに就て方丈記の作者ならずとも、私などでさへ見ても見ても飽ない大きい魅力を藏してゐる。河は春夏秋冬、それぞれの趣あつておもしろく無限に私の心に觸れ來るのである。

先年私は用事があつて信州伊那を訪ひ、そのついでに彼の地の人々のすゝめに誘はれて天龍峽に遊んだのであつた。

「信濃の春はおそけれど……」と歌にうたはれてゐる、そのおそい信濃の春さへもやや過ぎがたの四月のほんたうに末の頃であつた。山の落葉松が薄く緑にかすんで、その下に短く早蕨が萠えはじめてゐた。私たちはその山道をあへぎ登つて、高い巖の上から名にきいてゐる天龍峽の深い水の流れを見おろしたのであつた。その時私は蒼々とした、むしろ蒼黒く見える水の流れを想像してゐたのである。然し私が見おろしたその深い大いなる河の水は、白濁りに濁つて渦まき流れに流れてゆく……私は思はず

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