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『青年に訴う』は、クロポトキン自身も言っているごとく、クロのもっともお得意のものだ。そして二十余りの諸外国語に翻訳されて、クロの著作の中でももっとも広く読まれている。

僕はかつてそれを、もう十三、四年前のことだが、『日刊平民新聞』に訳載した。そしてその最後の一章のために、秩序紊乱という名の下に、二た月か三月牢に入れられた。

その留守中に、クロから故幸徳に手紙が来て、「自分の著書の中でももっともモデレェトな(温健な)あんなもののために、その自由を犠牲にした若い同志に」云々とあった。

その後三、四年して、僕の翻訳はアメリカにいる同志の団体の社会革命党から出版され、その幾百部かは日本にもはいって来た。

こんどはそれを全部書きかえたのだ。

週刊『労働運動』に連載した時には、ほとんど無事であったのだが、一まとめにするとなると無残にやられてしまった。

仕方がない。あきらめられぬとあきらめるんだ。

大杉栄

私がいま話そうとするのは青年諸君にだ。だから老人ども――勿論それは頭と心との老人ども――は、こんな本はうっちゃって、無駄に眼を疲らすようなことはしないがいい。

私は諸君を、十八歳か二十歳かに近いものとし、徒弟もしくは学業を終えて、今やまさに実生活にはいろうとするものと仮定する。世間がしきりに諸君に注入しようとした、いろんな迷信から脱け出た頭を持っているものとする。悪魔などを恐れないものとする。牧師どもの長ったらしい御説法などを聞きに行かないものとする。さらにまた、頽廃しかかった社会の悲しむべき産物であるところの、猿のような顔をして短かいズボンをはいて歩道を練って行くところの、そしてまたこんな年齢で、すでに何事をおいてもの快楽の情慾しか持たないところの、かののらくら息子ではないとする。それとは反対に、私は、諸君をごく真面目な心を持っているものとする。そして、それだから私は諸君に話しかけるのだ。

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