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TORENDIA

醫師と旅行鞄の話

本文約24,900字 ・ 読了時間 約50分

あらすじ(AIが作成しました)

好奇心旺盛で単純なアメリカ人のサイラスは、パリ滞在中に隣室のゼフィリーン夫人と不審な英国人に関わり、危険な陰謀に巻き込まれる。正体不明の勢力に翻弄される中で、彼は偶然にもある遺体の入った旅行鞄を運び、フロリゼル殿下と出会う。本書は、好奇心が招いた不可解な事件を通して、未知の悪意と対峙する一人の男の逃走と成長を描く物語である。

ロバート・ルイス・スティーヴンソン

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サイラス・キュー・スカダモーア氏は、單純な、惡氣のない、若い亞米利加人だつた。この男の生れた新英蘭は、同じ新世界のうちでも、特にさういふ性質が缺けてゐると言はれてゐる地方なので、その點が一層彼の信用を増すもととなつてゐた。この男は非常な金持だつたが、自分の小遣と云へば、いつも克明に小さな紙製の手帳につけてゐた。そして羅甸區の所謂家具附ホテルの七階から、巴里の人氣場所などをあれかこれかと調べて樂しみにしてゐた。彼の吝嗇は大方習慣から來てゐた。そして仲間の間で特に有名になつてゐるこの男の長所は、主として遠慮深いといふ事と、年がまだ若いといふことであつた。

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